2009年/フランス、日本 監督・脚本:諏訪敦彦、イポリット・ジラルド 配給:ビターズ・エンド この作品のように、「子ども」の目線に立ち、彼らのリアルな姿を描こうとすることは、ある種、実験的な試みなのではないだろうか。主人公は二つのアイデンティティーを持つ9歳の女の子。愛し合っているはずだった両親が実はそうではなかったというショック。親の離婚に巻き込まれ、親友とも離れ離れになり、行ったこともない母の国で暮らさなくてはならない。そんな状況に追い込まれたら、果たして「子ども」はどう立ち向かっていくのだろうか。この作品からもそういう作意が感じられる。 実際、脚本の台詞部分を空白にし、役者の即興で作るという諏訪監督独特の手法がとられたという。慣れた役者でも難しい手法に応え、瑞々しい感性で演じたふたりの子役が素晴らしい。けれども、大人の期待、作品の意図を理解して演じたことが、すなわち「子ども」の本当の心理かどうかは、やはりわからないままだとなおさらに感じてしまう。「子ども」たちが、劇中の理不尽な大人の言動に振り回される姿を見て、心が痛くなってしまった。 だが、この作品の鍵となる「森」の存在には心癒される。ここでは、フランスと日本という二つの「世界」を行き来するスポット、小さな少女が何か力をもらい、新しい世界に踏み出すきっかけとなる場所である。森はどこにあってもピュアで神聖な存在。静かな風が渡り、木々が木漏れ日に美しく光る森は、少女たちの心の機微に連動し、確かに、不思議な力を発揮しているように思える。丁寧に積み上げられていった物語と森の力は相乗効果となって、子どもたちを鮮やかに映し出している。 この映画が評価されるのは、そうした大人の試みが成功したということなのだろう。そして観客は「子ども」だった頃の記憶をかすかに呼び起こされるに違いない。(★★★ 加賀美まき)
■ユキとニナ
新しい世界へと踏み出していく少女の姿を描く“優しい宝物”のような物語
出演:ノエ・サンピ、アリエル・ムーテル、ツユ、イポリット・ジラルド
上映時間:93分
公開:2010年1月23日(土)、恵比寿ガーデンシネマ他、全国順次ロードショー
公式HP:www.bitters.co.jp/yukinina/
■ストーリー
ユキは、フランス人の父と日本人の母とパリで暮らす9歳の女の子。夏休みが始まる日、ユキは両親から離婚を告げられ、母が自分を連れて日本に帰ろうとしていると知り大きなショックを受ける。ユキは仲良しのニナと離れたくないし、今の生活を変えたくない。何より、両親に離婚して欲しくないと考えたユキは、ニナと一緒に、両親がもう一度仲良くなるための計画を立て、ふたりに手紙を出す。しかし、ユキの想いは両親に届かず、母は日本へと旅立ってしまう。それでも何とか仲直りさせようと考えたユキとニナは、ついに家出を決行する。そしてふたりは森へたどり着く……。
■レヴュー
不思議なことに、誰もが「子ども」という時代の経験者でありながら、大人になる間にそのことを忘れ去ってしまうらしい(そうすることで大人になっていくのだと思うのだが)。つまり、「子ども」を描こうとする時、大人の解釈によるステレオタイプな「子ども」の感情を作品に盛り込んでいくしかないことになる。
■DVD情報