2008年/日本、ロシア、カザフスタン 監督:佐野伸寿 配給:アップリンク カザフスタンは中央アジア5か国の中でもっともロシア化されている国で、独立までは人口の半数近くをロシア人が占めていた。独立はしたが旧共産党時代のトップはそのまま残り、現政権も議席のすべてを与党が占めるなど、独裁国家状態はそのままだ。もちろん大統領もそのまま。言論の自由はないが、中国のように経済が好調な間は反政府運動もないだろう。ただし共産党時代に押さえ込まれていた宗教が復活。この映画とは異なり、まだムスリムによるテロ事件は起きていないが、近隣諸国のイスラーム化の影響を受けるのは時間の問題だろう。 この映画は、そんなカザフスタンの現状を3つの民族の子どもに集約させている。タイトルは「ウイグルから来た少年」だが、物語はその3人の子どもの生活をほぼ均等に描いている。独立まではいい暮らしをしていただろうロシア人だが、現在はかなりの数がロシアに戻ってしまい、この少女のように娼婦に身を落とすものもいるのだろう。カザフ人の少年は何をしたいか目標が見つからず、常に苛立ちを抱えている。ウイグル人は実際には少数だが、この国のイスラームの声を代弁させているのだろうか。 映画はそんな3人の生活を淡々と描いていく。プレスの「あらすじ」には、その3人の過去が書かれているが、映画ではほとんどそれは説明されていない。もとは映画に盛り込む予定が、省略されてしまったのだろうか。もっともそんなことがわからなくても、推測しながら見られるのが映画のいいところだ。ハッピーエンドにならないところは予想がつくが、やはりそれぞれに悲劇が待っている。そんな結果になってしまうところが、現在のカザフスタンの問題だと提起しているように。 本作の監督は在カザフスタン日本大使館や自衛隊で働いていた経歴を持つ日本人。なかなか物が言いにくいだろうカザフスタンの国民に代わり、声を代弁しているかのようだ。上映時間も短いし、控え目で決して饒舌な作品ではないが、なかなか意欲に満ちた作品だと思う。(★★★前原利行) ・10月8日(木)には佐野伸寿監督、カザフスタンから来日中のエルラン・ヌルムハンベトフ氏(監督補)によるトークイベントが企画されている。詳しくはHP参照のこと。
■ウイグルからきた少年/Yashi
カザフスタンに生きる、異なる民族の3人の子どもたち
それぞれが破滅への道を歩む様を、日本人監督が描く
出演:ラスール・ウルミリャロフ、カエサル・ドイセハノフ、アナスタシア・ビル・ツォーバ
公開:10月3日より渋谷アップリンクにて
上映時間:65分
公式HP:www.uplink.co.jp/uyghur
■ストーリー
カザフスタンの首都アルマトイ。工事現場の一角に男が現れ、そこに住む三人の子どもたちから「住居代」を集金している。そこに暮らしているのは、両親を逮捕されて中国から逃げてきたウイグル人のアユブ、暴力と退廃に浸るカザフ人の少年カエサル、そして街娼をしながら生きるロシア人の少女マーシャだ。やがてアユブは、イスラームの殉教者になる運命を強いられていく。
■レヴュー
カザフスタン経済は好調なようだが、それでもその「発展」から取り残されていく人々がいる。そしてその犠牲になるのは子ども達だ。
■関連情報
■DVD情報
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