監督・脚本ポール・ワーグナー: 配給:アップリンク 特に、中国人=悪者という単純な図式にせず、ドルカの恋人に中国人青年をすえ、また拷問をする看守がチベット人同胞であることをきちんと描いている所は真実味を感じる。(ジャン・ジャック・アノーの『セブン・イヤーズ・イン・チベット』では毛沢東らしい人物が砂曼荼羅を足でかき消すみたいなベタなシーンがあって、白けてしまったことがあった。) 主演を演じているダドゥンは実際にチベット音楽界のスターで、彼女の半生はまさにドルカと重なるものだ。今はアメリカで生活しているという。流暢な北京語を話す中国人役にはマレーシアや台湾出身の俳優が演じている。ラサの繁華街、八角街で「フリー・チベット!」と叫ぶシーンに、まさか、と思ったが、そのシーンはネパールで撮影されたものだった。監視の目をくぐり抜けて、チベットやネパールでゲリラ撮影されたという制作裏話もこの映画のストーリー同様に興味深い。(カネコマサアキ ★★★) 同時上映『雪の下の炎』。
■風の馬/Wind horse


1998年/アメリカ
出演:ダドゥン、ジャンバ・ケルサン、リチャード・チャン、テイジェ・シルバーマン
上映時間:97分
公開:4月11日より渋谷アップリンク他、全国順次ロードショー
公式HP:http://www.uplink.co.jp/windhorse/top.php
■ストーリー
1998年、チベットの首都ラサ。地元のディスコで歌手をしていたドルカは将来有望な中国人青年の恋人の助けで、レコードデビューを控えていた。ドルカの兄ドルジェは仕事も無く、ビリヤード場でたむろし、酒に溺れている。ある日、幼少期に出家した従妹のペマが投獄された。ダライ・ラマを信仰することが禁止された事に対して、公然と怒りをぶちまけたことが原因だった。監獄で拷問を受け、瀕死の状態で釈放されたペマはドルカとドルジェの家に引き取られた。
■レヴュー
この映画が作られたのは1998年。その1年ほど前に、僕はチベットに行っている。ラサの街は、写真で見る限り今ほど漢族化されておらず、平静を装っていた。もちろん、ダライ・ラマ14世の御真影を街中で見つけ出すことはできなかったし、八角街で売っているのは中国側が承認したパンチェン・ラマ11世の写真ばかりだった。現地のチベット人にいろいろと話は聞いていたのだが、観光客が素通りしただけではわからない抑圧の実感がこの映画にはこもっている。
■関連情報
タイトルの『風の馬』とは、仏宝を乗せた馬のことで、「ルンタ」と呼ばれる。「ルンタ」は街中や峠の石積みにひるがえっている「タルチョ」とよばれる五色の旗や、紙片にプリントされている。
■DVD情報