2006年/中国 監督:ワン・チュアンアン 配給:ワコー、グアパ・グアポ 本作のヒロイン、トゥヤーはそうした環境の変化だけではなく、半身不随になった夫の面倒まで見なければならないという重労働の生活に疲れ果てている。しかし愛する家族を守るためにも生きていかねばならない。そこで夫の勧めにより、他の男と結婚する道をしぶしぶ選ぶことになる。妻に逃げられた近所の青年センゲーは彼女に好意を見せるが、子どもっぽくて頼りがいがない。昔の知り合いの実業家は、夫バータルの入院費を出してくれるが、そこに愛はない。住む場所を失った夫バータルには草原で見せていたはずの雄雄しさはなく、病院で自殺を図る。出てくる男はみな、優しさはあっても頼りがいがないのだ。そんな中で、トゥヤーは自分の心の弱い部分を誰にも見せることができず、気丈に生きていくしかない。 ストーリーだけを追うと暗く辛い話になるが、辛いシーンは淡々と描かれており、また、トゥヤーに好意を寄せる青年センゲーの子どもっぽい行動など、意外にユーモラスなシーンも多い。最後はハッピーエンドといってもいいかもしれないが、彼女の表情を見ていると、トゥヤーの苦難はまだまだ続くのだろう。そんなことを感じさせる。(★★★前原利行) ・ヒロインのトゥヤーを演じたユー・ナンは国際的にも注目され、『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟の新作『スピード・レーサー』への出演も決まっている。
■トゥヤーの結婚/Tuya’s Marriage
苛酷な環境の中で、強く生きていく女性を描いたドラマ
2007年のベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)受賞
出演:ユー・ナン、バータル、センゲー
公開:2月23日よりBunkamuraル・シネマ
上映時間:112分
公式HP:tuya-marriage.jp/
■ストーリー
中国の内モンゴル自治区西北部の草原に、トゥヤーの一家が住んでいる。トゥヤーの夫バータルは井戸を掘っていた時にダイナマイト事故にあい、下半身不随になっていた。トゥヤーは水を汲みに十キロも離れた場所へ毎日往復し、また砂漠化していく草原の中で家畜を養わなければならない。疲れた果てた妻を見たバータルは、離婚をトゥヤーにうながす。やがて学生時代にトゥヤーを気に入っていた実業家ボロルが現れ、バータルが住める施設を手配してくれる。しかしバータルは孤独と家族への想いから自殺を図る。
■レヴュー
前に紹介した中国映画『白い馬の季節』でも問題になっていたように、現在、中国の内モンゴル自治区では草原の乾燥化が進んでおり、多くの地域で遊牧ができなくなっている。そこでは伝統的な生活を続けることはもはや不可能に近く、消費社会の中に人々は組み込まれなければ生きていけない。
■映画の背景
・映画の舞台となるのは内モンゴル自治区だが、首府フフホトよりも寧夏回族自治区の首府・銀川からの方が近い、西夏王陵の後ろにそびえる賀蘭山を越えたアラシャー盟にある。もともとこのアラシャー盟は、1979年までは寧夏に編入されていたという。映画ではトゥヤーの一家が営んでいる遊牧だが、実際には政府による移住政策が進み、遊牧をしている人はもういないという。
■関連情報
・本作は2007年のベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)を受賞。この映画祭は、近年のグランプリ作品(『サラエボの花』『イン・ディス・ワールド』)のように、社会派作品が注目を集めている。
■DVD情報