監督・脚本・音楽:トニー・ガトリフ(『ラッチョ・ドローム』『ガッジョ・ディーロ』『僕のスウィング』) 配給:日本スカイウェイ 本作の舞台はまさに「世界の果て」のような荒涼とした冬のトランシルヴァニア地方。主人公のジンガリナはそこで「愛の死」を迎え、やがて新しい自分へと再生していく。きっとその先には暖かい春が待っているだろう。荒々しさと母性を持った主人公ジンガリナを『トリプルX』『マリーアントワネット』のアーシア・アルジェント(『サスペリア』などの監督ダリオ・アルジェントの娘)が、存在感たっぷりに演じている。チャンガロ役のビロル・ユーネルも好演。 監督のトニー・ガトリフは、自分のルーツでもある「流浪の民ロマ」を常にテーマに抱き、『ガッジョ・ディーロ』『僕のスウィング』といった作品を作り続けてきた。彼の作品では音楽が映像と同等の力を発揮しているが、この『トランシルヴァニア』でも現地の民俗音楽をベースに、監督自らオリジナル曲を創作している。前作『愛より強い旅』ででも見られたように、民俗音楽による強いトランス感がここでも継承されている。「見る」というより、「体験」する映画かもしれない。 (★★☆前原利行)
■トランシルヴァニア/Transylvania


(C)2006 Tsotsi Films (Pty) Ltd.
2006年/フランス
出演:アーシア・アルジェント(『ランド・オブ・ザ・デッド』『マリーアントワネット』)、アミラ・カサール(『原色パリ図鑑』)、ビロル・ユーネル(『愛より強く』)
公開:8月、シアター・イメージフォーラムにて
上映時間:102分
■ストーリー
姿を消したロマの恋人ミランを探しに、ジンガリナは友人のマリーとルーマニアのトランシルヴァニアへやってくる。言葉も通じない地で、ジンガリナはようやくミランを探し出すが、彼はもう彼女を愛していなかった。すでにミランの子を身ごもっていたジンガリナは絶望の底へと落ち、自暴自棄になる。やがてジンガリナはジプシーの少女に誘われるまま、マリーと別れて異国をさまよう。そんな彼女を拾ったのは、旅を続けながら商売をしている風変わりな中年男、チャンガロだった。二人の旅が始まる。
■レヴュー
冬のトランシルヴァニアへ行ったことがある。もう10年以上前のことだ。ドラキュラ城のあるブラショフに行きたかったからだ。12月のルーマニアは一日中雲がどんよりと垂れ込めて暗く、そして午後4時には日没を迎えてしまうほど1日も短かった。首都ブカレストで列車のチケットを買う時、窓口で「朝一番の列車はジプシーが多いから止めておいたほうがいい」と注意された。当時(今でもかもしれない)、ルーマニアに限らず、中欧諸国のどの駅でも大勢のジプシー(風の?)ホームレスの母子がたむろしており、子どもたちは隙あらば乗降客の持ち物を盗ろうと狙っていた。小さな子どもでも7〜8人がかりで襲われたらひとたまりもない。お金がないのでホテル代を惜しみ、毎晩夜行列車で移動していた僕は、列車の発車時刻まで毎夜駅で、荷物を盗まれないように抱えて、寒さに震えていた。そこには僕が知っていた西欧の風景とは違う時間が流れていた。
■DVD情報
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