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■タッチ・オブ・スパイス/A Touch of Spice

2003年/ギリシャ

監督・脚本:タソス・プルメティス
出演:ジョージ・コラフェイス(『エスケープ・フロム・L.A.』『コロンブス』)、タソス・バンディス、マルコス・オッセ、バサク・コクルカヤ

配給:ギャガコミュニケーションズGシネマグループ
上映時間:107分
公開:2005年正月第2弾Bunkamuraル・シネマにて
 
■ストーリー
 
 アテネの大学で宇宙物理学を教えているファニスのもとに、祖父がイスタンブールからやってくるという知らせが入る。出迎えの準備が整った時、1本の電話が。祖父が倒れたのだ。ファニスは遠い昔を回想する。
 1959年、イスタンブールのバザールで、7歳のファニスは雑貨店を営む祖父の店でよく遊んでいた。スパイスと人生について教えてくれた祖父。そして幼なじみのサイメとの初恋。しかしキプロス問題でトルコとギリシャの対立が激しくなり、ギリシャ系であるファニスの一家は、祖父を残してアテネへ強制退去させられる。ギリシャでの生活は、スパイスが欠けた料理のように味気なかったが、いつしかそれにも慣れていった。ファニスは大好きな祖父に会いたくて仕方がなかったが、しかし祖父はなかなかイスタンブールを離れようとはしなかった。
 
■レヴュー
 
 日本では珍しいギリシャ映画が公開される。そして題材も旅行人読者好みではないかと思う作品だ。
 かつてトルコには、全土に渡って多くのギリシャ系住民が住んでいた。カッパドキアやフェティエで無人になった村を見たことがある。ギリシャ独立後の住民交換で住むものがいなくなった村だ。その後もトルコとギリシャの関係が悪くなる度に、残っているギリシャ系住民は強制退去させられていった。この映画は、そうした人々のうちの一家族の物語である。
 トルコのイスタンブールは、僕が世界で最も好きな都市のひとつだ。アジアの両端にある間柄だろうか、日本人の僕にはとても居心地がいい。そのイスタンブールで雑貨商を営むおじいさんの店で遊ぶ、孫のファニス。子どもの彼には宗教や国家による偏見はまだない。ファニスの父に強制退去を迫る官僚が、「イスラムに改宗すればトルコにいてもいい」と告げる。このことからも「ギリシャ人」という人種ではなく、
「ギリシャ人」「トルコ人」という枠組みは、宗教により引かれたのだなあと感じる。実際、旅行していた時に、エーゲ海沿いに住むトルコ人とギリシャ人の外見上の差は、僕にはほとんど感じられなかった。
 アテネに移り住んだ一家。しかしギリシャの人々はトルコを追放させられた彼らに対して冷たかった。長年「コンスタンティノープル」に住み、食生活や習慣、話す言葉も異なる彼らを「トルコ人」と呼び、他所もの扱いをしたからだ。なのでこの作品では、一家を追い出したトルコよりも、むしろ同胞であるギリシャ人の仕打ちに対して冷たい目を向けている。その点が興味深い。
 とはいえシリアスになりがちな題材を、祖父と孫の交流を軸に、随所にユーモアをちりばめ、料理作りの楽しさを含めた楽しい作品だ。(★★☆前原利行)
 
■関連情報
 
 本作はギリシャで公開されると、それまで持っていた『タイタニック』の記録を破り、ギリシャ映画史上第2位の興業収入を記録する大ヒットになった。また各国の映画祭にも出品され、多くの賞を受賞している。
 
■映画の背景
 
・本文にも述べたが、本作では1959年以降に、トルコに住むギリシャ系住民がたどった経緯が描かれている。一家がトルコから国外退去になるきっかけとなったのが、1959年のキプロス独立だ。ギリシャ系住民が多く住む南部と、トルコ系住民が多い北部に分断されてしまったこの2つの国家(北キプロスはトルコ以外の国の承認を得ていない)の成立に際し、両国は緊張。1961年にトルコに住むギリシャ人が強制退去させられる事件につながる。そのあたりの知識を事前に頭にいれてみると、よりこの映画がわかりやすくなるだろう。
・おじいさんが店を営んでいるのは、イスタンブールの旧市街。おそらくムスル・チャルシュ(エジプシャン・バザール)近くの、ジャミイ(モスク)のそばという設定なのだろう。現在のシーンではオルタキョイ周辺も出てくる。
 
■DVD情報
 
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