『木靴の樹』『聖なる酔っぱらいの伝説』で、カンヌとヴェネチアを制覇したイタリアのエルマンノ・オルミ監督。『桜桃の味』でやはりカンヌのパルムドール、他に『友だちのうちはどこ?』『オリーヴの林をぬけて』などで日本にファンも多いイランのアッバス・キアロスタミ監督。『ケス』『大地と自由』『SWEET SIXTEEN』などの名作を放ち、2006年のカンヌでパルムドールを受賞したケン・ローチ監督。カンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞した、この3人が共同で長編に挑んだのが、この『明日へのチケット』だ。
長編といっても3人の監督による3つのエピソードがリレー式につながる中編集だが、ヨーロッパを来たから南へと走る列車を舞台にしており、話はうまくつながっていて違和感はない。
オルミ監督の第1話は、インスブルックからローマ行きの夜行列車に乗り込んだ老教授が主人公。現地で親切にしてくれた女性へのほのかな想い。過去の記憶。現実と空想が交差していく意識の流れ。それを打ち砕くように、乗り合わせた軍人が移民の家族のミルクを蹴散らかす。様々な人間が乗合わす、ヨーロッパならではのエピソードだが、人間の善意を信じるオチがいい。
次のキアロスタミ作品は、傲慢な中年女性とその世話をする若い青年のエピソード。第1話とは一転し、人間に対しての厳しいまなざしが感じられるものだ。
最後は、サッカーの試合を見にローマへ向かう3人のスコットランド人青年たちの話。そのうちの1人の切符が紛失するという事件が起き、青年たちはアルバニア移民の家族を疑う(第1話に出てきたあの家族だ)。いかにもな労働者階級の(ちょっと頭の悪そうな)若者たちと、父親に会いに行く途中の切実な移民の家族という、ふだんなら交わることない両者が接した時、青年たちの心に変化が生じる。ここで我々の予想を裏切るかのようなことがいくつかあり、その結果サプライズ的に感動が訪れるのだが、押し付けがましさがない語り口もさることながら、素直に感動し、泣けてきた。まさしく、「希望」を感じさせるエンディングで満足した。(★★★★前原)