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■タクシデルミア ある剥製師の遺言Taxidermia(剥製術)

激動の二十世紀ハンガリーに生きた三代に渡る親子を描いた、おぞましくも陽気で奇抜な作品。
観るものに嫌悪感をもよおさせる描写の連続。食事の前後の鑑賞は避けたほうがいい。

2006年/ハンガリー、オーストリア、フランス

監督・脚本:パールフィ・ジョルジ(『ハックル』)
出演:チャバ・ツェネ、ゲルゲイ・トローチャーニ、マルク・ビシュショフ

配給:エスパース・サロウ
公開:3月より渋谷イメージフォーラムにて
上映時間:91分
公式HP:www.espace-sarou.co.jp/taxidermia/

 
■ストーリー
 
第二次世界大戦中、兵士モロスコヴァニは、上官の中尉とその太った妻と2人の娘しかいない人里離れた前哨地点で、奴隷のような生活を送っている。彼の楽しみはマスタベーションなど性欲を解き放つ時にしかない。中尉の妻と寝てしまったモロスコヴァニは、中尉により頭を打ち抜かれる。彼の子を宿した中尉の妻は、尻尾のついた赤ん坊カルマンを産む。成長し、巨漢になったカルマンは、共産政権下のハンガリーで国を代表する早食い競争の選手になり、やはり同じ選手で巨漢のギゼラと結婚する。2人の間に生まれた息子ラヨスは親に似ず、痩せこけた物静かな男に成長する。そして剥製師になったラヨスは、ある計画を実行した。
 
■レヴュー
 
パールフィ・ジョルジ監督の前作『ハックル』は、ハンガリーの田舎の村の営みを、人間から昆虫、風のそよぎまで同等に描き、驚くべき映像表現を見せた、デビッド・リンチ的な世界観の傑作だった。そのジョルジ監督の新作は、前作のタッチを求める者には期待を大きく裏切るもので、放尿、勃起するペニス、嘔吐、肥満、生物の解体と、人が不快感を抱くことを、これでもかと見せつけられる、相当な悪趣味の世界だった。

もちろんその悪趣味の中にはユーモアが底流として流れているが、映像のインパクトが強く、笑うに笑えない。親子3代の話のうち、中盤の「食べる」と「吐く」がペアになって出てくる早食い選手カルマンの話がもっともユーモラスだが、くどいほどの次から次へと口から吐かれる大量のCGによるゲロに、だんだんこちらの胃の調子がおかしくなってくる。

最後の剥製師ラヨスの話になると、ユーモアを完璧に不気味さが上回ってしまった。もともとテレビのドキュメンタリー番組でも手術シーンに弱い僕には、ちょっと限界。スプラッター映画の作り物の人体破壊シーンならともかく、動物を使ったであろう本物はキツイ。そんな訳で、この映画をもう一度見たいとは思わないが、別にこれが「駄作」だとは思わない。みんなが嫌悪感を抱く映画を作ることには成功している。それは20世紀にハンガリーという国家がたどった歴史がそうだったのだと表明しているように。他人の種を宿して生まれ、共産主義時代にはひたすら消費して肥大化し、現代では痩せこけて、生きながら剥製になるような国家、それがハンガリーである。本作はそれをある家族に託した、そんな寓話なのだ。(★★★前原利行)

 
■DVD情報
 
タクシデルミア~ある剥製師の遺言~(通常版) [DVD]
CCRE (2008-11-05)
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