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■台北に舞う雪

都会で傷ついた新人歌手と生まれ育った田舎町で暮らす心優しい青年。
ふたりが出会い、惹かれ合い、すれ違い、そして気づいたこと・・

2009年/中国、日本、香港、台湾

監督:フォ・ジェンチイ
脚本:ス・ウ、田代親世
出演:チェン・ボーリン、トン・ヤオ、トニー・ヤン、モー・ズーイー

配給:ゴー・シネマ
上映時間:103分
公式HP:http://taipei-snow.jp/
公開:2010年正月第2弾 シネスイッチ銀座他 全国順次ロードショー

 
■ストーリー
 
 台湾北部の渓谷沿いに広がる小さな町で、幼い頃に出奔した母親を待ちながら暮らすモウ(チェン・ボーリン)は、町中の雑用を引き受け、忙しい毎日を送っていた。ある日、彼の前に新人歌手のメイ(トン・ヤオ)が現れる。プロデューサー、レイへの想いを抱え、新作発表の直前に声が出なくなった彼女は、台北を飛び出してきたのだった。モウは酔いつぶれた彼女を宿に送り、それをきっかけに、ふたりは打ち解けあう。やがて一緒に過ごす時間が多くなると、メイは明るい笑顔を取り戻していった。
 しかし、彼女の居場所はレイやマネージャーの知るところとなる。新年の祭りの日、野外ステージにメイの天使のような歌声が響きわたる。彼女を迎えに来たレイにとびきりの笑顔を向けるメイを見て、モウは自分の気持ちを言い出すことができなかった・・
 
■レヴュー
 
 傷心の新人歌手と田舎町に住む心優しい青年の小さな恋物語である。ふたりは偶然出会い、少しずつ近づき、お互いの気持ちを理解し合って心を通わせる。しかしそこには、ひと目惚れのトキメキや胸が痛くなるような恋愛の高揚感はなく、ふたりは微妙な距離を保ちながら時を過ごしていくのである。

 恐らく、ふたりともお互いに傷つき、傷つけ合うことを避けたかったに違いない。声が出なくなり台北から逃げてきたものの、プロデューサーへの想いを断ち切れず、夢もあきらめたくないメイ。一方のモウは、母親を探したい気持ちがありながら、町を出られず、自分を育ててくれた町の人への恩返しだと言って、忙しく走り回る日々を送る。ふたりは自分の気持ちに素直に向き合えずにいたのである。だが、一緒に時を過ごすうちに、ふたりはお互いの気持ちに気づき、やがて自分の居場所を探し始める。モウは静かにメイへの恋心を募らせていくが、彼女はいずれここを出て元の世界に戻るのだろうと予感する。メイは、モウの優しさに癒され、彼に惹かれながらも、日増しに膨らんでいくレイへの想いを止められない。

 ふたりの本当の結末はわからないが、この作品の焦点は切ない恋模様ではなく、迷いながらも、新しい自分を見つけていく若者の姿にあるように思う。立場や境遇が違っても、空間と時を共に過ごす中で、相手を思いやる温かい気持ちや人とのつながりの大切さを知る。それは、日本人の原案・脚本を大陸の監督が台湾を舞台に撮る、台湾と大陸の若い俳優をキャスティングする、というこの作品の試みにも重なる。

 だが、ベタな純愛物語であってもなくても、ふたりの想いに心が痛くなるような共感を得たかったと思う。キーワードの「雪」も、願い事を書いて空に飛ばす、感動的なはずの「天灯」も何かあっけなかった。

 とはいえ、『山の郵便配達』『ションヤンの酒家』『故郷の香り』がそうだったように、フォ・ジェンチイ監督はいつも舞台となる土地を魅力的に映し出す。ここでは、渓谷沿いにレトロな街並を残す菁桐(チントン)、その対極にあるのがネオンの灯りに埋め尽くされて広がる街、台北。ふたつの風景は主人公ふたりの感情と彼らの進む道を暗示している様にも思え、その映像美は秀逸だった。(★★★ 加賀美まき)

 
■DVD情報
 
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