この難民に関してほとんど沈黙していたメディアにかわり、世界が忘れてしまったこの社会についての映画を作り、情報を与え、注目してもらいたいと思ったという。
撮影前の調査や撮影中のエピソードを含めた、監督のアフガン・レポート『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』は現代企画室より'01年11月30日に本体価格1,300円で発売されている。
9.11以前には、なぜこんな重要性のないことを取り上げて映画にしたのかと大勢の人から聞かれたという。メディアはお金持ちと力を持っている人のためにあり、お金と権力を持っている人が人々に何を知らせるべきかをメディアに指示していると、集まった記者に対する皮肉を交えながら「世界の人々はブルカをかぶっているのと同じ状態」だと言ってのけた。
政治活動をしていた若き日について聞かれると「バティスタ政権と戦ったチェ・ゲバラ、あるいは、タリバンと戦ったマスードのことを思い起こしてください」と語った。変えるべきものは政治体制よりも文化や人間の考え方で、人の考え方が変わらない限り、人を取り替えたところで社会状況は変わらないと思い、政治活動をやめ映画を作り始めたという。それは今のアフガンについても同様だ。
テロについては、ある種の病気だが、貧しい者が、力を持つ者、あるいは富める者に対する反動であり、富裕な人たちは、貧困な人たちが反動を起こす前に状況を変えることを考えなくてはいけないと述べた。
アフガンで解決すべき、早急な問題は飢餓と文盲だと監督はいう。タリバン支配以前から大半が文盲であったため、字を教える人材もアフガンにはいない。そのため、監督は仲間と「アフガン子ども運動Afgan Children Education Movement(ACEM)」というNGO団体を'01年11月に作った。そして、アフガン難民が自立へ向えるよう、まずイランやアフガンの各地で識字・衛生教育が受けられるように、イランの要人や国際機関に働きかけ、身銭を切って奔走している。『カンダハール』が上映される映画館にはこのACEMの募金箱が置かれるという。
終止穏やかに、時折冗談を交え、よどみなく話し続けるマフマルバフ氏は、映画監督というより人権運動家のようにさえ見えた。
'02年1月11日13:00〜14:15、千代田放送会館にて(取材・文 今野雅夫)