| ■第10回フランス映画祭 横浜2002 リポート 6月22日(土) |
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映画祭も4日目。この日は週末ということもあり朝から大盛況。初回と最終回以外は前売りチケットはすべて売り切れという状態だ。本映画祭で良心的だと思うのは、マスコミ関係の入場は特別な場合を除き(写真撮影で席が必要など)、前売り券を買っている観客の入場より後だということ。次にスポンサーの招待客を入れ、当日券とマスコミ関係の入場はほぼ同時になっている。だから取材で訪れている僕でも、席が確保できない場合がある。個人的にはしんどいが、それでいいと僕は思う。観客との質疑応答も、的外れな質問もかなりの確率で出るが、それもそれでいい。観客に公平なチャンスが与えられていることが、すばらしいと思うからだ。
さて本日の上映は5作品。10:00からはパトリシア・プラトネール監督の『ギャラクシーにようこそ』。12:00からはニコール・ガルシア監督の『見えない嘘』、15:15からはエティエンヌ・シャティリエーズ監督の『タンギー』と、女性監督の作品が続く。実際、今回の長篇17作品のうち、女性監督によるものは6作品。フランス映画界における女性の位置が高いことがよく示されていると言えよう。18:00からは巨匠コスタ=ガブラスの5年ぶりの新作で、ヴァチカンとナチスの関係を描き物議をかもし出した『アーメン』、21:00からの最後の上映(といってもかなり遅れたが)は、フランスで大ヒットを記録したアクションコメディ『ル・ブレ』(原題)だった。(取材・写真/前原利行) |
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十字架とナチスのカギ十字を組み合わせたデザインが賛否を呼んだ『アーメン』のポスター
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| ■ギャラクシーにようこそ/Les petites couleurs |
製作年/製作国:2002/フランス
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監督:パトリシア・プラトネール
出演:アヌーク・グランベール、ベルナデット・ラフォン、フィリップ・バス
上映時間:93分
公開:未定
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| ■レヴュー |
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暴力夫から逃げ出し、未亡人モナ(ベルナデット・ラフォン)が経営するモーテル「ギャラクシー」へたどり着いた美容師クリステル(アヌーク・グランベール)。彼女はモナの好意で働くことになり、生きる喜びを見い出して行く…。
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最初はオドオドして自信のなかったクリステルが、モーテルに集う人々と出会い、次第に輝いていく。そう聞いて『バグダッド・カフェ』を連想する人もいるだろう。実際、この映画にはアメリカ映画的な雰囲気が漂っている。監督のパトリシア・プラトネールも、モーテルを題材にすることはフランスでは珍しいと述べていた。この作品の舞台を、脚本をそのままにアメリカに移してもまったく通用するだろう。そういえば主演のアヌーク・グランベールは、この映画ではジェシカ・ラング似だ。
主人公たちが思い悩むシーンもあるが、それも適度に切り上げ、テンポはダレることなく進んでいく。クリステルとモナがいつもテレビで観ているソープオペラ風の、西部劇ミュージカルもうまく息抜きの笑いになり効果的。
ただ細やかさはあるものの、スケール感やダイナミクスに欠け、品よく小さくまとまっている気がする。またお約束とはいえ、ハラハラすることなく物語が進行していくのは少々マイナス要素。ただ観ていて嫌な気はしない。監督もスピーチで「シンプルな小さなしあわせを求める、普遍的なストーリーです」と言っていたんだから。★★☆(前原利行) |
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左から出演のフィリップ・バス、ベルナデット・ラフォン、
監督のパトリシア・プラトネール
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| ■見えない嘘/L'Adversaire |
製作年/製作国:2001/フランス
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監督:ニコール・ガルシア
出演:ダニエル・オートゥイユ、ジェラルディン・ペラス、エマニュエル・ドゥヴォス
上映時間:120分
公開:未定 |
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| ■ニコール・ガルシア監督のコメント(観客からの質疑応答に答えて) |
| 彼がなぜあのような犯罪を犯したかに興味を持ち、映画化を始めました。ジャン=クロードは、大学生時代からウソをつきだし、周囲をすっかり騙していました。医師の資格もとっていないのに、大学で知り合った女性と結婚し、友人との交流も続いていたのです。まったく働いたことがないのに、毎日出勤して時間を潰して帰ってくる生活が10年も続けられたことは驚きです。彼はいつも自分の嘘がばれる一歩手前の際どさと、まわりを騙していることの満足感の間を行き来していたのでしょう。ただ、最後は悲劇的な結末になることは、彼も早くから予感していたと思います。そして袋小路に入って出られなくなる運命にあったのでしょう。これは極端な形ですが、三面記事に載るような狂気に見舞われる加害者も、見方によっては被害者的な部分があると思います。 |
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中央左が出演のジェラルディン・ペラス、
マイクに向かうのが監督のニコール・ガルシア |
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| ■ジェラルディン・ペラス(ジャン=クロードの妻クリスティーヌ役)のコメント |
| (ジャン=クロードの妻は本当に彼の嘘を信じていたのかという質問に応えて)彼女が被害者であったか、それとも共犯者であったかは、彼女が死んでいるので誰にもわかりません。今回はわからないので自分なりに、彼女の中に自分が投影できるように努力しました。嘘はつく人と信じる人がいなければ成立しません。長年、彼がついていた嘘を、盲目的なまま信じていたという意味において、彼女もまた共犯者と呼べるのではないでしょうか。 |
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| ■レヴュー |
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フランスで実際にあった事件をもとに書かれた小説を、女優としても、また『ヴァンドーム広場』としても知られるニコール・ガルシア監督が映画化。1993年の1月、ジャン=クロード・ロマン(ダニエル・オートゥイユ)は妻と幼い子ども2人、そして両親を殺害、家に火を放って自殺しようとするが死にきれず逮捕される。映画はその彼の最後の数年を、過去にさかのぼり、そこにまで至った複雑な心理を描くことに挑戦している。ジャン=クロードは18年間に渡って家族や友人たちを騙し続け、仕事もせず、借金まみれになり、行き詰まったことから、殺害に至ったというのだ。
しかし重苦しい話だ。実話だからあまり手を入れられないが、アメリカ映画だったらもっとサスペンス的要素を盛り込んで、娯楽色を強めたろうが、ニコール・ガルシア演出は実直なのだが、淡々とし過ぎていることは確か。そして主演のダニエル・オートゥイユが実に暗い。彼の顔がアップになる度にこちらの気分が滅入ってくる。別にこれは彼が悪いわけではなく、映画の中で愛人に「あなたって陰気ね」と言われる男を演じているのだから仕方がない。ただ、陰気な中にも、どこか魅力のあるところを出して欲しかった。それがあるから多くの人を騙せ通したのだろうから。
しかしよくこれだけ長年、騙し続けることができたのかは驚異だ。それだけの精神力があったということもあるだろうが、きっと周囲の盲目的な期待が増長させたのではないだろうか。アメリカ映画『ビューティフルマインド』でも、主人公の精神病が進行したのに気づかないというか、気づこうとしない周囲という描写があったが、この事件も実際はそうした要素は強かったのだろう。最後の悲劇は重苦しく、別に残酷な描写があるわけではないが見ていられない。力作だが、とにかく救いのないヘヴィーな映画だった。★★☆(前原利行) |
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