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■第10回フランス映画祭 横浜2002 リポート 6月21日(金)
 

 
 映画祭3日目は、昨日と打って変わっての晴れになり、気温も上がった真夏日となった。10:00からの最初の上映は、毎年恒例の『短編映画特集』。今年も80本近い作品の中から、5〜30分の作品6本が選ばれて上映された。その中で特に印象に残ったのは3本。持ち家を売ろうとする夫婦のもとに、次から次へと個性的な客がやってくるがなかなか買い手がつかないというコメディ『優しい心』は、小気味良いテンポとひねりの効いたオチがあり、観客の拍手を浴びていた。3DCGアニメ『タウの死』は、どこか異次元の世界のような砂漠で、巨大な生物タウの死をめぐり様々なクリーチャーが争う不思議な作品で、強い印象を残した。最後に上映された『スカッシュ』は、スカシッュコートでの、上司と部下という2人の男の息詰まる葛藤と試合を、緊張感とユーモア溢れる演出で描いた入魂作だった。
 続いて12:30からはフランスの海辺の町の1年を10人の登場人物の群像劇で描いた『海のほとり』を上映。監督のジュリー・ロペス=キュルバル、出演のビュル・オジェらが上映後に観客からの質疑応答に応えた。以降14:45〜『ぼくのパパは、きみのパパ』(マニュエル・ポワリエ監督)、17:45〜『トロワ・ゼロ〜サッカー狂時代』(ファビアン・オンテニエンテ監督)、20:15『トスカ』(ブノワ・ジャコ監督)の3作品が続いて上映された。
(取材・写真/前原利行)
  
『スカッシュ』の監督リオネル・バイユーのスピーチ
 
■海のほとり/Bord de mer
製作年/製作国:2002/フランス

監督:ジュリー・ロペス=キュルバル
出演:ビュル・オジェ、エレーヌ・フィリエール
上映時間:88分
公開:未定
 
■レヴュー
 
 ノルマンディ地方にある海辺の小さな町。ここは夏は海水浴客でにぎわうが、砂利工場がある以外は、これといった産業もない静かな町だ。夏には海の監視員をしているポール。その彼女で工場で働くマリーは現状に不満を抱き、イライラしている。ポールの母親ローズは工場を辞めた後、生き甲斐を失い、年金をスロットで使い果たしてまう。ローズは古くからの知り合いの工場長アルベールの母親とは微妙な関係だ。アルベールは父から受け継いだ工場を経営しているが実権はなく、無気力な日々を送っている…。
 この作品に登場する人々は、誰もが行き場のない現状に直面し、不安をそれぞれ抱えている。しかしこの小さな町にいる限り、解決策はどこにも見い出すことができない。1年が過ぎ、再び海岸に人々が集まるが、そこには駆け落ちしたローズとアルベールの姿がない。彼らの旅立ちは希望からきたものだったのか、それとも絶望からのものだったのか‥。海を見る人々の前を、一匹のサメの大きなヒレが横切って行く。まるで不安と恐れの象徴であるかのように。しかしそれを見つめる人々の表情は、なぜか明るかった。
 微妙な心の襞を描いたような繊細な作品だが、いまひとつ登場人物に感情移入できず、少々退屈もした。ただしとても誠実な作品であることは確かなのだが。監督のジュリー・ロペス=キュルバルは、本作がデビューの女流監督(まだ若そう)。この作品で本年度のカンヌ映画祭のカメラドール賞(新人監督賞)を受賞した。
★★(前原利行)
 
 監督のジュリー・ロペス=キュルバル(左)と
出演のビュル・オジェ(右)

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