2009年/ドイツ・フランス・イタリア 監督:ファティ・アキン 配給:ビターズ・エンド ところが、バンドがレストランの片隅でリハーサルを始めると、演奏目当てで人が集まり、頑固シェフの出した料理が評判を呼ぶ。刑務所から仮出所した兄のイリアス(モーリッツ・ブライプトロイ)も加わり、盗んできたDJセットで音楽をかけると店は連日大盛況。すべてが上手く回り始めたかに見えた。しかし、不動産業を営む友人の男が、“ソウル・キッチン”の土地を手に入れようと画策し始める・・・ 適当なところで何とかやりくりしている主人公ジノスに次々と不幸が襲いかかる。恋人は海外へ旅立ち、滞納した税金を督促され、衛生局からは厨房の改善命令。刑務所から仮出所する兄を引き受け、食洗器を移動中にぎっくり腰に。インスピレーションを感じて雇ったシェフは、腕はいいが頑固者。客足は激減し、あわやの休業。そこに愛する恋人が男連れで一時帰国し、止めの一撃。その後店は持ち直すが、それだけでは終わらない・・。 監督は「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」のファティ・アキン。深刻なテーマを扱ったそれらの作品とは全く異なる、普通の人たちの姿を軽快に描いた作品を見事に作り上げている。ダメ男だけど憎めないジノス兄弟と、一癖も二癖もある登場人物たちが織りなす、愛や友情。夢と希望、嫉妬や欲望がおもしろおかしく入り乱れ、二転三転するストーリー展開は観客を全く飽きさせない。そして、盛りだくさんのコンテンツを最後にはすっきりまとめあげる辺りは流石である。 ジノスにとって、“ソウル・キッチン”は何より大切な心のよりどころなのである。ジノスも“ソウル・キッチン”も何度となく危機的状況に陥り、右往左往する彼の姿に笑わされたり、一緒に落胆したりするけれど、最後には(彼の恋模様も含めて!)応援したくなってしまう。誰にでも大事な場所があり、巡り合わせがある。だから人生そう捨てたもんじゃない、そんなメッセージを受け取れる。 劇中、多彩な音楽が使われていて楽しめる。また、エンドロールでは、キャスト紹介のデザインがお洒落。人物像にあったフォントが使われたデザインはドイツのテイストがきいている。(★★★☆ 加賀美まき) ファティ・アキン、僕の好きな監督である。彼の全作品を見たわけではないのだが、僕が観た『太陽に恋して』『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』の3本とも、とてもいい作品だ。つまりハズレがない。 前作『そして、私たちは愛に帰る』でも、複数の登場人物を巧みに描いていたアキン監督は、本作でもより軽やかに各キャラクターを見せてくれる。大衆食堂ソウル・キッチンで、低価格だが冷凍食品でいいかげんな料理を作っていた主人公。しかし、シェフのアドバイスを受けて、手の込んだ料理を作り上げていくシーンが、楽しい。この“流れ者”的な偏屈なシェフ(『愛より強く』で主人公を演じたビロル・ユーネル)のキャラがいい。また、仮出所するために弟の“ソウル・キッチン”で働く乱暴者の兄イリアスに、『太陽に恋して』では主人公を演じていたモーリッツ・ブライプトロイなど、アキンの過去作品の主役を演じた俳優たちが脇を固めているのもうれしい。 いつもは出自のトルコ系移民の家族を描くアキンだが、今回は、主人公たちはギリシャ系移民という設定。でも、見た目はあまり変わらないのだろう。主人公にはいろいろ困難が降りかかるが、コメディにふさわしいハッピーエンドが用意されているので、安心して観て欲しい。(★★★★前原利行)
■ソウル・キッチン/SOUL KITCHEN

脚本:ファティ・アキン、アダム・ボウスドウコス
出演:アダム・ボウスドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ、ビロル・ユーネル
アンナ・ベデルケ、フェリーネ・ロッガン
上映時間:99分
公開:1/22(土)より、シネマライズほか全国順次ロードショー!
公式HP:http://www.bitters.co.jp/soulkitchen/
■ストーリー
ハンブルクで倉庫を改装したレストラン“ソウル・キッチン”を経営するジノス(アダム・ボウスドウコス)。店は繁盛しているとは言えず、税務署からは滞納金を督促される始末。その上、恋人は仕事で上海へ旅立ってしまい、かといって、愛着のある店を閉めて追いかける決心はつかない。その後、新しく雇ったシェフは頑固者で、客足は遠のくばかり。追い打ちをかけるように、衛生局から新しいキッチン設備の導入を命じられ、食器洗浄機を動かそうとしたら椎間板ヘルニアに。結局、休業を余儀なくされてしまう・・・。
■レヴュー
ハンブルクの倉庫街にある“ソウル・キッチン”。冒頭に出てくる料理は、揚げたスティック状のフィッシュフライ。どこのスーパーでも手に入る冷凍食品だ。さらにシュニッツエル(カツレツ)にフライドポテトを添えた一皿は、ドイツ庶民フードの定番。それを美味しそうに食べる常連客の姿に、のっけから思わず笑ってしまう。その冴えないレストラン“ソウル・キッチン”を舞台に、紆余曲折する経営者の主人公と、彼を取り巻く人々の姿を描いたコメディーが展開する。
■DVD情報
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