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■闇の列車、光の旅/Sin Nombre

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ホンジュラス、メキシコからアメリカへ。移民の少女とすべてを失った少年が、危険な旅を命がけで乗り越え、未来をつかもうとする。中南米の衝撃的な"今"をリアルに描いたロードムービー。

2009年/アメリカ、メキシコ

監督・脚本:キャリー・ジョージ・フクナガ
出演:パウリーナ・ガイタン、エドガー、フロレス、クリスティアン・フェーレル、テノック・ウエルタ・メヒア、ディアナ・ガルシア

配給:日活
上映時間:96分
公開:6月19日(土)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
公式HP:www.yami-hikari.com

 
■ストーリー
 
 ホンジュラスに住む少女サイラ(パウリーナ・ガイタン)は、父と叔父と共に故郷を後にし、移民たちがひしめきあう列車の屋根に乗り込んで希望の地アメリカを目指していた。メキシコまでたどり着くも、金品を巻き上げるために列車に乗り込んで来たギャング一味のカスペル(エドガール・フロレス)らに襲われる。だが、彼はサイラにとって命の恩人となる。彼女に暴行を加えようとしたギャングのリーダーを殺したからだ。裏切り者となり組織から追われる身となったカスペルと、彼に信頼と淡い恋心を寄せるようになったサイラは行動を共にする。途中で列車を降りた2人は、トラックで国境を目指すのだが……。
 
■レヴュー
 
 タイトルからくるイメージよりずっと、実際はバイオレンスに満ちた衝撃的な映像が続くロード・ムービーである。原題は”Sin Nombre”(名無し)。キャリー・ジョージ・フクナガ監督は、中南米からの移民が、列車の上にしがみつくように乗ってメキシコを経由してアメリカへ移動することを知り、この作品の製作を思いたったという。地球の真反対の国で豊かに暮らす日本人には、想像すら出来ない中南米のリアルな現実を切り取った作品である。

 この作品は中南米が直面する現実の二つの部分にスポットを当てている。 まず、冒頭で登場するのは、顔や体中にMSと入れ墨を入れたストリー・ギャングの一団。貧困に喘ぐ国で力を得たければ、そういう場所に身を置くしかなく、若者は凶悪犯罪に手を染めていく。まだいたいけな少年に銃を持たせ、イニシエーションとして人に向けて引き金を引かせる。そんなことがまかり通っているのが彼らの世界だ。

 一方、貧困から抜け出せず、先の見えない庶民は、わずかな希望を求めてアメリカを目指す。舞台となるホンジュラスからアメリカに向かうには、当然メキシコを不法な手段で通過しなくてはならない。無法地帯と知っての移動は死と隣り合わせである。そこは、旅行者が訪れる明るく陽気なメキシコとは全く異なる様相を見せる。

 未来が切り開けない国で、貧困から抜け出すためには、働き口を求めて不法入国するか、ギャング団に属するしかない。そのような現実に翻弄され、その連鎖の中に取り込まれるのはいつも若者たちである。この物語はそのような不本意な生き方を強いられる二人の若者を映し出している。ギャングの青年とアメリカを目指す少女が出会い、先の見えない状況下でも二人は互いに希望を見いだそうとする。その二人、サイラを演じたパウリーナ・ガイタンとカスペル役エドガー・フロレスの瑞々しい演技が印象的。監督の確かな視点と映像の美しさも合わさって、社会派の見ごたえのある作品になっている。

 本当なら希望に胸を膨らませる年頃なのにもかかわらず、劇中、サイラはずっと不安そうな暗い顔をしている。その彼女が素敵な笑顔を見せるシーンが印象的に残る。アメリカを目前にして、サイラはカスペルに一緒に行くのかと尋ねると、彼はもちろんと答える。その彼を見て彼女は嬉しそうに微笑むのである。

 光は見えてくるが、それが希望につながっていくのかどうかは、わからない。だがそれが中南米の現実。この作品によって、それを私たちははっきりと目に焼き付けることができる。(★★★★ 加賀美まき)


■関連情報
 
2009年 サンダンス映画祭 監督賞/撮影監督賞受賞作品
 
■DVD情報
 
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