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■ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト/The Rolling Stones Shine A Light


(c) 2007 by PARAMOUNT CLASSICS, a Division of PARAMOUNT PICTURES, SHINE A LIGHT, LLC and GRAND ENTERTAINMENT (ROW) LLC. All rights reserved.

ザ・ローリング・ストーンズとマーティン・スコセッシが
作り上げたロック・ライブ映画の新たなマスター・ピース

2008年/アメリカ

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ザ・ローリング・ストーンズ、クリスティーナ・アギレラ、バディ・ガイ、ジャック・ホワイト

配給:東北新社
公開:12月5日よりTOHOシネマズ系にて
上映時間:122分
公式HP:www.shinealight-movie.jp

 
■レヴュー
 
映画はいきなりコンサート!
ではなくステージ設営までのやりとりからスタート。
完璧主義者の監督スコセッシは、曲ごとに細かいカット割りを作りたく、早く曲目リストを手に入れたいが、全米ツアー中のストーンズからは返事なし。ステージセットにもなかなかOKの返事を貰えない。やきもきしている中、とうとう当日になってしまう。
曲順はいいからせめて曲目だけでもくれというスコセッシ。
会場にはクリントンやらヒラリーやらがきて、ストーンズの面々があいさつに出る。
「やあ、ミック。久しぶりだね。と親しげなクリントン」
クリントン、大統領やめてすっかりいい表情。対照的なのが、まだ民主党の大統領候補戦中のヒラリー。ストーンズの面々、ヒラリーのママと握手。

ようやくセットリストが決まったのが開演30分前。スコセッシの手に紙が渡る。一曲目は…。
ジャッ、ジャーン、ジャララージャララー。
そう「ジャピン・ジャック・フラッシュ」だ。じらされた甲斐あって、「待ってました!」と心の中で叫ぶ。中野サンプラザぐらいの会場は総立ち。ミック、じいさんとは思えないほど動きが良すぎる。

続いて2曲目「シャッタード」のイントロが始まる。
このあたりで気付いたのが、この映画の音楽のミックスはサントラCDと異なること。ギターが映るとギターの音量が大きくなり、チャーリー・ワッツに寄ると、ドラムの音が大きくなり、あとはオフ気味。つまり内臓マイク付きのビデオカメラで、バンドを撮っているように、ショットが切り替わる度に、微妙に音のバランスが変わるのだ。ロン・ウッドを映すと、ソロを弾いているわけでなくても彼のバッキングのギターの音量がちょっと上がるというわけ。
主観ショットならぬ、主観ミックスとでもいうべきか。

続いて3曲目「シー・ワズ・ホット」。
あまり聴くことのなかったアルバム『アンダーカバー』収録。なんてことのない単純な曲だが、ノリがすごくいい。ギター2本を中心とした現在のストーンズは、80年代のツアーの時よりもずっといい。この曲、後半にかけてグイグイと盛り上がる。寄った映像が多いこともあり、ストーンズのライブを最前列で観ている気分だ。

4曲目「All Down the Line」と5曲目「Loving Cup」は「メインストリートのならず者」からの選曲。「Loving Cup」ではホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトがゲストで参加。掛け合いのボーカルを聴かせてくれる。曲と曲の間、60〜70年代のインタビュー映像が挟み込まれる。飽きさせないようにするためだろうが、DVD買ったら飛ばすだろうなあ。その分、曲を増やしてくれた方がうれしいのだが。

6曲目、「この曲を作った時、恥ずかしくて他人に歌ってもらった」とミックが言って始まるのが「As Tears Goes By」。キースはこの曲ではアコギ。エンディングのミックの「♪ムームムー〜」のスキャットもあり。実際のライブではこの後で「I'm Free」になるのだが、映画ではカット。

7曲目「Some Girls」、8曲目「Just My Imagination」、9曲目「Faraways Eyes」はいずれも1978年のアルバム『Some Girls(女たち)』から。2曲目の「シャッタード」もそうだから、今回のステージ18曲中4曲がこのアルバムから選ばれて最多。久しぶりに聴いた曲ばかりだ。

10曲目でミックが「マディ・ウォーターズの曲をやるぜ」と、2人目のゲストのバディ・ガイを紹介。「Champagne & Reefer」という曲だ。バディ・ガイは相変わらずの太い声を聞かせてくれる。演奏が終わった後、キースがバディに自分のギターを手渡す。明らかにアフレコなのだが、「このギターをあげるよ」という声がかぶさる。キースがバディに何を言ったかは観客に聞こえるはずもないし、マイクで拾っているはずもないのだが、この映画、そういったところがいくつかあり、例えば携帯で写真を撮るファンのショットでは、シャッターを切るカシャッと言う音が被る。実際は聞こえるはずもないのだが、あくまで「聞こえた」という主観にここでも音づくりが基づいている。

8〜9曲目ぐらいで、少しだれていた僕だが(コンサートの中盤の魔の時間)、次の曲イントロ一発で目が覚める。11曲目「ダイスをころがせ」だ。これはライブの定番曲で「メインストリートのならず者」からの選曲。このアルバムからは3曲目。やはりキースのねばっこいリフがかっこいい。

ここでバンド紹介。実際は長めのところを、編集で手際良くつないで短くしている。そして恒例のキースのコーナー。珍しくギターを持たないで、マイクスタンドに向かったキース。ロングコートを羽織って、タバコをすいながら歌う姿はかっこいい。こういった、「何もしないでもアウトロー感」は他のメンバーには絶対出せない。歌うは「You Got The Silver」。名盤「レット・イット・ブリード」の名曲だ。渋い。まるで役者だ。続いて、ギターを手にとり、「Connection」を歌う。あまり聴くことがないアルバム『Between The Buttons』からの曲だ。別の日には「Little T & A」をやっていたようだ。キースのギターは、やっていることは高校生のアマチュアバンドのレベルぐらいなんだろうけど、もう老舗のブルースマンの域なのか、コードひとつ鳴らしただけでも味わい深い領域に達している。

キースのコーナー終了。場内暗転した中で、お馴染みのパーカッションのイントロ。ライブ後半戦、14曲目は「悪魔を憐れむ歌」だ。ステージにミックの姿はない。どこから出てくるの?と思っていると、客席後方のドアが開き、まぶしいライトをバックにしたミックがそこに立っているという演出。通路を通ってミック舞台へ。後半でキースのソロあり。観客、盛り上がる。フーッ、フーゥ!

15曲目、ここで最後のゲスト。クリスティーナ・アギレラ登場。ミックと掛け合いで歌うは「リヴ・ウィズ・ミー」。これも名盤「Let It Bleed」からの選曲。アギレラの動きは何となく、ティナ・ターナーの動きを彷佛させる。ルックスはかなり違うんだけど。腰に手を回すなど恒例のセクシー絡みあるが、なんか「芸風」という感じで、それほどいやらしくない。
実際のライブでは、この後に初日は「黒くぬれ!」、2日目は「ホンキー・トンク・ウイメン」を演奏したが、映画では流れからかなぜかカット。

16曲目はあのイントロが。「スタート・ミー・アップ」だ。リアルタイムで聴いたときは、それほどいい曲だとは思わなかったが、年月を重ねて行くうちに、確実にかっこいい曲になっていった。音もオリジナルとはほど遠い、いいひずみ具合だし。

前にも書いたが今回のミックスでは、ベース、キーボードやブラスなどのサポートメンバーの音量は控えめ。そうしたバランスのアルバム『ア・ビガー・バン』のツアーということもあるのだろうが、ギターバンドとしてのストーンズを前面に出しており、それがワイルドでかっこいい。スライドさせてコードへ行くところでちょっとリズムが悪かったりするところをカメラはアップで押さえ、わざわざミックスでその部分を強調していたりするのだが、そこがまたかっこいい。今までのライブアルバムに比べると、リズムやバランスが悪くなっている分だけ、かっこいい。リズムが悪いといっても下手というのではなく、リズムマシーンとかスタジオミュージシャンの叩く無個性なドラムじゃないという褒め言葉だ。そんな域に達しているストーンズを見ていると、もしビートルズがまだ活動していたら、ひとまわりしてこんな感じのバンドになっているんじゃないかと感じた。ちょうど「レット・イット・ビー」のアップル屋上ライブのような、ドライブ感なのだ。

本編終了。ここからアンコール2曲。まずは「ブラウン・シュガー」。ストーンズ屈指の名曲。ロニーのギターソロ。観客大盛り上がりの、イェーッ、イェーッ、イェーッ、フゥー! そして低音弦強調のリフにした「サティスファクション」でライブは終了となる。

バックステージへ駆け込むメンバー。狭い通路にスタッフやらカメラがひしめいている。スコセッシの姿も見える。いつのまにか画面は通路をいく、メンバーの主観カットになり、裏口のドアが開く。外に待ち構えている群衆。そしてライトとカメラを従えたスコセッシが「撮れ!撮れ!」と煽っている。カメラはコンサート会場の看板を映し、ニューヨークの空へと舞い上がって行く。そこに映画のタイトルにもなった曲「シャイン・ア・ライト」が被さる。初日の10曲目に「Faraway Eyes」の代わりにやった『メインストリートのならず者』からの曲だ。こうして映画「シャイン・ア・ライト」は幕を閉じた。今までの中で最高のストーンズ映画だ。(★★★★前原利行)

 
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