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■精神

2008年/アメリカ・日本

監督:想田和弘.
出演:「こらーる岡山」のみなさん ほか

配給:アステア
上映時間:135分
公開:6月13日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー
公式HP:http://www.laboratoryx.us/mentaljp/index.php

 
■ストーリー
 
精神科診療所「こらーる岡山」には統合失調症、鬱病、摂食障害、パニック障害、人格障害、そのほか様々な神経症を患う人々が通っている。これまでタブーとされてきた精神科にカメラを入れ、その世界を克明に観察する。深い傷を負った人間の深淵を覗くとともに、狂気と正気の境界線を問いただしていく。
 
■レヴュー
 
 こんな時代だから仕方ないことなのかもしれないが、世界を覆うこの陰々滅々とした空気はどうしたものだろう。雇用形態の変化や過酷さから精神を病む人も多いだろうことは容易に想像がつく。今にはじまったことではないが、日本は年間3万人近くの自殺者を生み出している。そのうち鬱を患っていた人は18%にのぼるという。

 かくいう自分も、気分に相当ムラがある人間で、もしかしたらすでに病気なんじゃ?!と思ったりもするが、アンタの場合はナマケ病、と軽く一笑されてしまうのが関の山である。では、病気の人と、そうでない人の境界線はどこにあるのか。そんな興味で、この映画を見てみたのだが、結論からいうと、その境界線は実に曖昧で、よくわからない。

 驚いたことに、映画に映し出される患者たちの顔には、一切のモザイクもボカシもかからない。一見、どこが病気なのかわからない普通の人々が写し出される。しかし、彼らの赤裸々な告白に耳を傾けて行くうちに、彼らが深い傷を負っていることがわかり、大きな戸惑いを覚える。

 家に帰ると幻聴が聞こえるという女性は、過去に自分の子供を死なせてしまったことを語る。自傷行為を繰り返す二児の母親は、貧困のために売春をしていたことを告白。25年間通院する男性が発症したのは、高校生のときで、毎日18時間ぶっ通しの勉強を半年間続けた後だった。どうやら躁病といわれる類のようだ。彼は手製の詩集を作っているのだが、その独自の世界と豊かな感性に驚かされる。不思議なことに、彼らに抱いていた戸惑いは、彼らの闘病生活や暮らしぶりを見ていくうちに、親近感へと変わっていくのだった。

 映画は、診療所の台所事情や、スタッフたちの苦労、さらには障害者自立支援法によって福祉が切り捨てられようとしている現状も伝えている。「こらーる岡山」の医院長は、月10万円の給料しか受け取らない。『赤ひげ』のような医者がこの現代にいるということに一縷の希望を見出す。しかし、精神科ではあたりまえなのかもしれないが、素人目ながら、投薬の量が多いのが気になった。映画のラストで、悲しい事実が告げられるのだが、治療の難しさを痛感せずにはいられない。(カネコマサアキ★★★☆)

 
■関連情報
 
釜山国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
ドバイ国際映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
マイアミ国際映画祭 審査員特別賞受賞

『陽のあたる場所から』(2003年、ソルヴェイグ・アンスパック監督)も合わせて観ることをおすすめします。

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