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■白い馬の季節/季風中的馬 Season of the Horse


2005年/中国

監督・脚本・主演:ニンツァイ(『天上草原』)
出演:ニンツァイ、ナーレンホア(『草原の愛モンゴリアン・テール』『天上草原』)、チャン・ランティエン

配給:ワコー、フォーカスピクチャーズ
公開:10月6日より岩波ホールにて
上映時間:105分
公式HP:siroiuma.jp

草原を飲みつくす「資本主義」という怪物。内モンゴルの草原を舞台に、伝統的な暮らしを棄てざるを得ない一家の悲劇を描く。

 
■ストーリー
 
旱魃により砂漠化が進む中国の内蒙古の草原に、伝統的な遊牧民の生活を送るウルゲンの一家がいた。彼の飼っている羊たちは次々と倒れていくが、ウルゲンにはどうすることもできない。妻のインジドマは息子のフフーの学費を払うために、年老いた白馬のサーラルを売り、町で暮らすようにウルゲンに訴える。しかし誇り高いウルゲンには遊牧民の暮らしを棄てることができない。インドジマはお金を稼ごうと街道に出てヨーグルトを売るが、商売慣れしていないためうまくいかない。やがて牧草地は柵で囲い込まれ、問題を起こしたウルゲンは留置所に入れられてしまう。ウルゲンは罰金を払うため、仕方なく愛馬サーラルをディスコのオーナーに売り渡すことにする。
 
■レヴュー
 
 何百年も前から変わらないかに見える伝統的な生活に、現代の資本主義が侵入してくる。2つの世界のギャップがあまりに大きいせいだろうか。本作は現代の話だが、象徴と神話性に満ちた作品になっている。

映画の始めの方に、主人公の一家しか暮らしいていない草原に、巨大なビールのバルーンを乗せた宣伝カーとドラを鳴らす楽隊が忽然と現れるシーンがある。まるでシュールレアリズムの絵画のようだ。中身が空気というビールのバルーンは空虚な存在だが、白い馬(=遊牧民の伝統の象徴)はそれにおびえて逃げ出し、草原に張られた鉄条網にはまって傷つく。「資本主義」という怪物が草原の草を食い尽くし、伝統を破壊していくことを象徴する見事なシーンだ。草原にはもう自由な場所はないのだ。

お金に困ったウルゲンが町で出会う、かつての仲間たち。村の出世頭である画家のビリグはジンギス・カンの子孫であることを誇示するが、彼の描く絵は観光客が喜ぶような陳腐な絵にしか過ぎない。漢人相手に商売をする者はかつての仲間を騙すようにして利ざやを稼いでいる。しかし誇り高く不器用なウルゲンにはそんな変わり身はできない。

ウルゲンが、売り渡してしまった白馬サーラルにディスコのショータイムで再会する場面も象徴的だ。肥えて太った半裸の女がかつての愛馬に乗り、赤いブラジャーをサーラルの顔にかける。赤は漢人が好む色のため、遊牧民が嫌う色だという。モンゴルの遊牧民の誇りを漢人が踏みにじるという場面だ。

いまや遊牧民が住んでいた大地には今や商売上手な漢民族が押し寄せ、素朴な暮らしも資本主義の波から逃れることはできない。しかしそんな滅びゆくものに対する愛情が、この映画の魅力なのだ。(★★★☆前原利行)

 
■映画の背景
 
地球全体の温暖化、遊牧民の過放牧による草の枯渇など、草原の乾燥化にはさまざまな理由が考えられる。文化大革命の時には、漢人が大量に入ってきて農地に変えようとしたが、表土が浅い草原は本来農作物を育てられない土地なので土地が疲弊し、荒地になってしまったという例もある。現在は、政府が土地を鉄条網で囲んで草原保護地を作っているが、それは「遊牧生活の死」を意味するのだ。
 
■DVD情報
 
白い馬の季節
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