監督・脚本・主演:ニンツァイ(『天上草原』) 配給:ワコー、フォーカスピクチャーズ 草原を飲みつくす「資本主義」という怪物。内モンゴルの草原を舞台に、伝統的な暮らしを棄てざるを得ない一家の悲劇を描く。 映画の始めの方に、主人公の一家しか暮らしいていない草原に、巨大なビールのバルーンを乗せた宣伝カーとドラを鳴らす楽隊が忽然と現れるシーンがある。まるでシュールレアリズムの絵画のようだ。中身が空気というビールのバルーンは空虚な存在だが、白い馬(=遊牧民の伝統の象徴)はそれにおびえて逃げ出し、草原に張られた鉄条網にはまって傷つく。「資本主義」という怪物が草原の草を食い尽くし、伝統を破壊していくことを象徴する見事なシーンだ。草原にはもう自由な場所はないのだ。 お金に困ったウルゲンが町で出会う、かつての仲間たち。村の出世頭である画家のビリグはジンギス・カンの子孫であることを誇示するが、彼の描く絵は観光客が喜ぶような陳腐な絵にしか過ぎない。漢人相手に商売をする者はかつての仲間を騙すようにして利ざやを稼いでいる。しかし誇り高く不器用なウルゲンにはそんな変わり身はできない。 ウルゲンが、売り渡してしまった白馬サーラルにディスコのショータイムで再会する場面も象徴的だ。肥えて太った半裸の女がかつての愛馬に乗り、赤いブラジャーをサーラルの顔にかける。赤は漢人が好む色のため、遊牧民が嫌う色だという。モンゴルの遊牧民の誇りを漢人が踏みにじるという場面だ。 いまや遊牧民が住んでいた大地には今や商売上手な漢民族が押し寄せ、素朴な暮らしも資本主義の波から逃れることはできない。しかしそんな滅びゆくものに対する愛情が、この映画の魅力なのだ。(★★★☆前原利行)
■白い馬の季節/季風中的馬 Season of the Horse

2005年/中国
出演:ニンツァイ、ナーレンホア(『草原の愛モンゴリアン・テール』『天上草原』)、チャン・ランティエン
公開:10月6日より岩波ホールにて
上映時間:105分
公式HP:siroiuma.jp
■ストーリー
■レヴュー
何百年も前から変わらないかに見える伝統的な生活に、現代の資本主義が侵入してくる。2つの世界のギャップがあまりに大きいせいだろうか。本作は現代の話だが、象徴と神話性に満ちた作品になっている。
■映画の背景
■DVD情報