2010年/中国 監督・脚本:チェン・カイコー 配給:角川映画 屠岸賈は、趙氏の遺児探しを始め、市中の赤ん坊を残らず連れ去っていく。集めた赤ん坊を皆殺しにすると脅され、程嬰はやむなく子どもを公孫に渡したと告げる。屠岸賈は兵を率いて公孫宅に押し入ると、そこで程嬰の妻が抱えていた赤ん坊を殺害。だがそれは程嬰の実子だった。そして、公孫も妻も殺され呆然自失となった程嬰は、趙氏の遺児を引き取り、“この子に息子の仇を討たせる”と誓う。その計画は、自ら屠岸賈の家臣となり、屠岸賈を遺児の義理の父にするというものだった。 やがて15年が過ぎ、成長した遺児・程勃は、屠岸賈を父と呼んで慕うようになる。だが、2人の父親に育てられた運命の子が、自らの出生の秘密を知るときがやって来る……。 前半は屠岸賈の謀反に始まり、荘姫の悲劇、そこに巻き込まれていく程嬰の姿、そして趙氏の遺児がどのようにして生き残っていったのかが、骨太に描かれていて見応え十分である。後半は、趙氏の遺児・程勃を育てながら復讐の機会をうかがう程嬰、程勃を溺愛してしまう屠岸賈という二人の父、事実を知らぬまま成長した遺児・程勃、そして屠岸賈への復讐心を募らせる元家臣の韓厥も加わり、絡み合う人間模様が脈所だ。 チェン・カイコー監督による新しい視点は、それまで善悪の対極にあった程嬰と屠岸賈の人物像を捉え直し、「二人の父親」の姿に焦点を当てているという部分。その分、凛々しく成長する「運命の子」程勃の物語が希薄な感もあるのだが、非道な一方で父性を見せる屠岸賈、助けた遺児を使って復讐を果たそうする程嬰、どちらも善と悪の呪縛に縛られた存在なのだとしているところが興味深い。そのふたりを演じるグォ・ヨウとワン・シュエチーの巧みな芝居が後半一番の見所になっている。特に、屠岸賈を人間味たっぷりに演じているワン・シュエチーがいい。名作『趙氏孤児』は、新しい解釈と俳優の魅力を加えた本作によって、さらに人々を惹き付けていくだろう。(★★★☆加賀美まき)
■運命の子/Sacrifice

(c)Shanghai Film Group Co., Ltd. Shanghai Film Studio/TIK FILMS/Stellar Mega Films Co., Ltd. /21 Century Shengkai Film
司馬遷『史記』にも記される歴史的名作『趙氏孤児』。その愛憎劇を名匠チェン・カイコー監督が新たな解釈を加えて描く。
原典:司馬遷『史記』
出演:グォ・ヨウ、ワン・シュエチー、ファン・ビンビン、ホワン・シャオミン
上映時間:128分
公開: 12月23日(金・祝) Bunkamura ル・シネマ ほか全国順次公開
公式HP:http://www.unmeinoko.jp
■ストーリー
今から約2,600年前の中国・春秋時代、晋の国。宰相をつとめ、栄華を誇っていた趙氏一族は、屠岸賈(ワン・シュエチー)の謀略にあい、王殺害の罪を着せられ、一族300人が皆殺しにされる。その騒ぎの最中、荘姫(ファン・ビンビン)は趙氏の子を生む。しかし、自らの運命を悟った彼女は、出産に立ち会った医師・程嬰(グォ・ヨウ)に「生まれた子を公孫に託し、その子に仇の名は明かさないで欲しい」と頼んで自害する。
■レヴュー
司馬遷の『史記』にも記された『趙氏孤児』は、屠岸賈の陰謀によって滅ぼされた趙氏一族の中で、唯一生き残った遺児・程勃(のちの趙武)が成長し、敵討ちを果たすという、長きに渡って語り継がれている中国の歴史物語である。京劇等、多様な舞台で上演され、様々な解釈、脚色がなされてきた。チェン・カイコー監督(「さらば、わが愛 覇王別姫」)によって映画化された本作でも、また新しい解釈を加えられている。