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■帝国オーケストラ ディレクターズカット版/Reichsorchester

ヒトラー政権下で演奏家たちは、なぜ帝国のオーケストラであることを選んだのか
ベルリン・フィルの歩んだ姿を、インタビューと記録映像で追うドキュメンタリー

2008年/ドイツ

監督:エンリケ・サンチェス=ランチ
出演:フルトヴェングラー時代の演奏家とその関係者

配給:セテラ・インターナショナル
公開:10月下旬
劇場情報:渋谷ユーロスペース
上映時間:97分
公式HP:http://www.cetera.co.jp/library/Reichsorche/index.html

 
■レヴュー
 
今年創立125周年を迎えるベルリン・フィルは、メンバーが楽団に雇用されているのではなく、ひとりひとりが運営に関わるという特殊な形態のオーケストラだ。そのベルリン・フィルが経営難から、ナチスの元で公務員待遇として過ごすことになった11年間、ベルリン・フィルは「帝国のオーケストラ」あるいは「ナチスのオーケストラ」とも呼ばれていた。本作は当時の楽団のメンバーで、現在まだ存命している2人の貴重なインタビューを交えながら、当時楽団員たちがどういう思いでその時期を過ごしたかを探っていくドキュメンタリーだ。

ヒトラーがドイツの首相になった1933年のドイツで、ベルリン・フィルは経済的な破綻からナチスの支援を受けることになる。宣伝大臣ゲッペルスは、ナチスのプロパガンダにたくみにベルリン・フィルを利用する。当時の指揮者は名指揮者として名高いフルトヴェングラー。特権待遇を受けた楽団員たちは戦争へ借り出されることもなく、戦時下でも演奏を続けることができた。しかしその陰では、ユダヤ人メンバーの排斥、プロパガンダへの協力、ナチスに入団しているメンバーによる横暴などもあった。

フルトヴェングラーは戦後ナチスの関わりを糾弾されたことが有名だが、本作ではあえてそのあたりには触れず、楽団員ひとりひとりにスポットを当て、彼らが当時どう感じていたかを探る。音楽家としては優れていても政治的には無関心だった彼らを、現在の視点で批判することは難しい。政治に関係なく彼らは演奏を続けたかったし、また権力に寄り添うことで多くの特権を得ることもできたのだ。

インタビューで彼らは「ナチスのオーケストラだった意識はない」と答えているが、外から見ればそうは見えなかったろう。政治には無関心だが研究熱心な学者が権力に利用され、大量破壊兵器の開発で功績を残す場合に似ているかもしれない。兵器と違って音楽は直接的には人を殺さないが、利用価値があるからナチスは終戦までベルリン・フィルにコンサートをさせたのだ。こうしたドラマは当時日本でもいろいろあったはずだ。本作はそうした自国の過去の検証ものも見てみたい気にさせてくれた。(★★★前原利行)

 
■映画の背景
 
・ナチスによるユダヤ人排斥にともない、ベルリン・フィルハーモニーの劇場にあったメンデルスゾーンの肖像画が外され、大っぴらにはその演奏はできなくなった。しかしナチスが崩壊し、戦後初の公演がベルリンで行われた際には、演目としてメンデルスゾーンの曲が選ばれた。

■関連情報
 
・ベルリン・フィル創立125周年記念上映として、本作の公開とともに新作ドキュメンタリー『ベルリン・フィル 最高のハーモニーを求めて』、そして『ベルリン・フィルと子どもたち』のアンコール上映が渋谷ユーロスペースで公開される。そちらもおすすめだ。
 
■DVD情報
 
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