監督・脚本:イム・サンス(『浮気な家族』) 配給:エスピーオー 1979年に起きた、韓国史上最大の事件「パク(朴)大統領暗殺」。密室で起きた事件の前後24時間を描く 独裁者でもあるパク大統領の暗殺は密室で起きたこともあり、韓国史の中でも謎が多い部分で、韓国でも裁判の証言記録を真実と信じる人はいないという。真相は藪の中なので、本作は「真実を暴く!」のではなく、大統領の側近たちの愛憎を描いたブラック・コメディ風に仕上げるのが目的。これは韓国社会の偽善と腐敗をブラックな笑いで描いてきた監督イム・サンス風の悲喜劇なのだ。 「民主主義を取り戻すために大統領を殺した」というキム室長の言い分は、あとから付け足しただけで、その行動は行き当たりばったりだ。本気で政権を掌握する気があったようには見えないほど、計画は穴だらけ。そんな後先を考えない彼の命令に従い、後に死刑になった部下たちが哀れ。 パク大統領が日本の演歌好きという設定が意外だが、彼は1917年生まれなので日本文化に違和感がなくても当たり前なのだろう。劇中、しばしば日本語も飛び出す。しかし韓国ではそのシーンが問題になったと言う。(★★★前原利行)
■ユゴ 大統領有故/The President’s Last Bang
2006年/韓国
出演:ハン・ソッキュ(『シュリ』『二重スパイ』)、ペク・ユンシク(『地球を守れ!』)、ソン・ジェホ(『殺人の追憶』)
公開:2007年12月15日よりシネマート六本木、シネマート心斎橋ほか
上映時間:104分
公式HP:www.cinemart.co.jp/yugo/
■ストーリー
韓国中央情報部のチュ課長は、大統領への女性の手配やその尻拭いに嫌気が差していた。そのころ大統領の周りでは、キム中央情報部長とチャ大統領警護室長が、大統領への忠誠心争いで対立していた。宴会の席でチャ室長に罵倒されたキム部長は、かねてから考えていた暗殺を決意。腹心のチュ課長とミン大佐に、発砲と同時に大統領の警護員たちを撃つよう指示する。宴会の席で呼ばれた女性歌手が「北の宿から」を歌う中、チュ課長は部下たちを集め、警備員たちの射殺を命じる。午後7時30分、キム部長が第一弾をチャ警護室長に、第二弾を大統領に撃ち放った…。
■レヴュー
■映画の背景
・大統領にまで登りつめたパク・チョンヒの日本名は高木正雄。日本統治下の満州で士官学校を首席で卒業し、日本の陸軍士官学校に進んだ。日本の敗戦後は、親日であったことは問題にならずに韓国軍に入隊し、朝鮮戦争を経てエリートコースを歩む。やがて1961年に軍事クーデターを起こして政権トップに。経済発展を推し進め、日本とも国交正常化を果たす。一方、北との緊張関係もあり、軍事独裁を推し進め、反対者はどしどし逮捕、拷問にかけた。大統領に立候補した金大中を東京で拉致したと言われる。デモや労働組合を鎮圧した独裁者だったが一般の人気も高く、2005年に韓国紙の「朝鮮日報」が行ったアンケートでは、尊敬する大統領の一位に選ばれた。
■関連情報
・韓国では本作の内容が大統領故人や遺族の名誉を汚すものとして、遺族が上映差し止めを裁判所に訴え、今でも係争中。裁判所は上映に際して、記録映像の部分の削除を命じた。