Home > 旅シネ > ポエトリー アグネスの詩

■ポエトリー アグネスの詩/Poetry

『オアシス』のイ・チャンドン監督の新作
詩作教室に通う老女が直面した厳しい現実

2010年/韓国

監督:イ・チャンドン(『オアシス』『シークレット・サンシャイン』)
出演:ユン・ジョンヒ、イ・デビッド、キム・ヒラ

配給:シグロ、キノアイ・ジャパン
公開:2月11日より銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館
上映時間:139分
公式HP:www.poetry-shi.jp

 
■ストーリー
 
川面を中学の制服を着た少女の動かぬ体が流れてくる。66歳になるミジャは、中学3年生の孫息子と2人暮らし。ある日、体の不調から病院を訪れたミジャは、身投げをした少女の母親が取り乱している姿を目撃する。自殺した少女は孫の同級生だったが、ミジャが孫に尋ねても「よく知らない」と素っ気ない。そのころ、ミジャは詩作教室に通い始め、教えに従って感じた言葉をメモに残し始めた。やがてミジャは孫の仲良し6人組の保護者たちに呼ばれ、死んだ少女が孫たち6人から性的暴行を受けていたことを知る。そしてミジャは、アグネスという洗礼名を持っていた少女の足跡をたどるようになる。
 
■レヴュー
 
前作『シークレット・サンシャイン』を公開当時見逃し、旅シネの他の執筆者のおすすめで観た。『オアシス』も傑作だったが、これには思い切りノックアウトされた。韓国のイ・チャンドン監督は寡作ながらも、まったくハズれがない高水準の作品を作り続けている。そして新作である本作もそれらの作品と並ぶ傑作であることはまちがいない。2時間20分の長尺だが、一度も時間を気にすることがなく最後まで夢中になって観た。

本作の主人公は少し浮世離れした感がなくもない老女だ。詩作教室で「美しいものを見つけてそれを詩にするように」と教わるが、なかなかまとまらない。その一方、孫息子のしたことに罪悪感を抱き、それまであまり気にかけることがなかった、人間の“負の部分”にも直面せざるを得なくなっていく。

詩を作ることに悩むミジャの姿は、世の中の悲惨な出来事に心を痛めながら作品を作るイ・チャンドンの姿でもあるのだろう。純粋にすばらしいものを求めて映画にしたいと思っていても、現実の“負”の部分がどんどん目に入ってきてしまう。その中では美しい言葉も断片的に浮かんでは消えていく絵空事に過ぎない。

他のイ・チャンドン映画同様、主人公、いや登場人物すべて(孫の仲間の保護者たちを除く)が何を考えているかは深く説明せず、それは私たちの判断にゆだねられている。とはいえこれは難しい映画ではない。なぜなら、次にどうなっていくのか決して目を離すことができない一流のサスペンス映画と同じで、登場人物に感情移入ができるからだ。しかし、答えはひとつではない。観客それぞれが自分なりの答えを探していく。これは映画なのだから。(★★★★前原利行)

Home > 旅シネ > ポエトリー アグネスの詩