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■ペルシャ猫を誰も知らない/No One Knows About Persian Cats


規制の中で自由を求めるテヘランの音楽シーン
『亀も空を飛ぶ』の監督の新作はセミ・ドキュメンタリー風

2009年/イラン

監督:バフマン・ゴバディ(『亀も空を飛ぶ』『酔っぱらった馬の時間』)
出演:ネガル・シャガギ、アシュカン・クーシャンネジャード

配給:ムヴィオラ
公開:8月7日、ユーロスペースほか全国順次公開
上映時間:135分
公式HP:persian-neko.com

 
■ストーリー
 
ここはイランの首都テヘラン。小さな録音スタジオに女の子ネガルとそのボーイフレンドのアシュカンがやってくる。2人はインディー・ロックのバンドをしており、一緒にロンドンで演奏するのが夢だ。そのためにパスポートやビザが必要な2人は、スタジオで便利屋のナデルを紹介される。ナデルは2人の作ったCDを聴いて、彼らの才能に驚き、協力することを約束。偽造パスポート造りの元締めのところに案内する。その一方で、ネガルとアシュカンは資金集めのコンサートを開くため、バンドメンバーを探しにテヘランのミュージックシーンをめぐっていく。
 
■レヴュー
 
情報がなく、なかなか外の世界には知られないイランの音楽シーンだが、本作ではその一端を知ることができる。『酔っぱらった馬の時間』、『亀も空を飛ぶ』といった作品で、クルド人が置かれている過酷な状況を描いてきたバフマン・ゴバディ監督。その新作は、今までの作風とはガラリと趣を変えたセミ・ドキュメンタリー風の作品だ。

イランでは音楽や芸能は政府によって厳しく統制され、コンサートを開くにもCDを出すにも歌詞を提出し、検閲を受けなくてはならない。誰がどんな手順で判断してそれを決めているのか。我々日本人から見たら、実にナンセンスなことも多いが、それもこの国の現状だ。たとえば女性が単独でステージ上で歌うのはNG。服装も日本の女性歌手なら、イランではほぼムチ打ち刑ものだろう。事前に届け出て承認された曲でないと演奏は不可で、その場のノリで曲を変えたら、逮捕。つまり「自由にやりたいなら、海外でやれ」ということになる。もちろん「自由」といっても色々あるだろうが、表現者(アーティスト)にとってそれを他人に決められることは、自分を否定するのと同じことだ。

本作では、主人公2人を狂言回しに、テヘランの現在の音楽シーンを次々に見せてくれる。そして知れば知るほど、表現者にとって厳しい世界かを知ることになる。その姿は、イランで自由に映画が撮れないゴバディ監督の姿に重なってくる。実際、本作を最後に、ゴバディ監督はイランを後にした。(★★★前原利行)


■映画の背景

イランでは長らく犬や猫を飼う習慣がなく、イランが原産の“ペルシャ猫”が外国で高価ということは、知られていなかった。身近にあっても誰も知らないということで、テヘランで暮らしていても、アンダーグラウンドの音楽シーンや、そのミュージシャンたちが苦労していることを誰も知らないということが、このタイトルに込められているのだろう。

■関連情報

この夏、映画公開を前に、ゴバディ監督はプロモーションで来日するはずだったが、中止になってしまった。ビザのための余白がパスポートになくなり、最寄のイラン大使館で申請しようとしたが、「イランに戻らないとできない」と拒否されたのだ。イランに戻れば、二度と出国できなくなる可能性が大なので、来日ができなくなったのだ。

■DVD情報

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