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■ワンナイト・イン・モンコック/旺角黒夜
 
 
監督・脚本:イー・トンシン(『つきせぬ想い』『夢翔る人 色情男女』)
出演:ダニエル・ウー(『ジェネックス・コップ』『美少年の恋』)、セシリア・チョン(『星願 あなたにもういちど』『喜劇王』)、アレックス・フォン(『君をみつけた25時』『ダブルタップ』)、サム・リー(『ピンポン』)

配給:ファイヤークラッカー/真空間
上映時間:110分
公開:キネカ大森ほかにて公開中
 
■レヴュー
 
貧富の差が広がる中国社会。香港の街角で殺し屋と刑事が出合う

 香港映画の低迷はいまだ続いているのか、日本での香港映画の公開本数はすっかり減ってしまっている。それに『インファナル・アフェア』シリーズや、『ザ・ミッション 非情の掟』のような秀作もたまには来るのだけれど、公開されてもつまらない作品も多いのだ。しかしこの『ワンナイト イン モンコック』は、そうした中では、見る価値がある「佳作」の部類に入るだろう。
 暗黒街の男とそれを追う刑事の2人の男を軸としたストーリーは目新しいものではないが、そこは『つきせぬ想い』や『夢翔る人 色情男女』などでアクションに頼らない人間ドラマを作ってきたイー・トンシン監督。2人の境遇や、それを取り巻くサブ・キャラなど、登場する多くの人物を単なる「やられ役」ではなく、個性を持った人間としてうまく機能させているのだ。
 大陸から殺し屋としてやってきた青年がダニエル・ウー。しかし仕事を引き受けた最大の目的が香港に出たまま音信不通になっている同郷の恋人を探すためで、香港に着くとさっそく彼女を探しに町へ出てしまう。彼がその前にプロとして殺人をしていたかが語られていないこともあり、「都会に出てきた田舎のあんちゃん」にしか見えない。また、その彼がまだ何の犯罪も犯していないうちから、自分を呼んだ同郷の手配師に裏切られて警察から逃げるハメになり、どんどん共感を呼んでいく。
 そうなのだ。この物語は「犯罪ノワール」という形は借りているものの、豊かで腐敗した都会に迷い混んでしまった貧しい農村出身者の運命を描くことがテーマなのだ。彼が途中で助ける、ヤクザに乱暴されている娼婦も大陸出身で、すでに都会のシステムに飲み込まれてしまっている。やがて青年ダニエルは暗殺も果たせないまま、娼婦に乱暴していたヤクザとその仲間たちに見つかり、ボコボコにされてしまう。ようやく恨みの一発を放ったところが、運悪く刑事たちの溜まり場食堂だったとはまるでツイてない。
 一方刑事たちもエンドレスな日常業務と超過労働、上下関係のしがらみと、やる気を失ったサラリーマンと同じ状態に放り込まれている。やる気満々の新米刑事もウザいだけ。とにかく出てくる登場人物の多くは、自分の思いとは裏腹に、すべて物事は悪い方へ悪い方へといってしまうのだから救われない。そのせいか、見終わった後には、深い余韻が残る。(★★★前原利行)
 
■映画の背景
 
 舞台となるのは香港随一の繁華街モンコック。夜になると屋台が並ぶ「女人街」や、コピー商品も売りまくりのコンピュータ店が並ぶ「電脳街」もあり、人通りが絶えることがない。
 

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