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■胡同の理髪師/剃頭匠(The Old Barber)
 
 
北京の古い街・胡同に住む、元理髪師のチン老人とその友人たち
彼らの姿を通し、消え行く古き時代の人の心と人生の晩秋の日々を描いた作品

2006年/中国

監督:ハスチョロー
出演:チン・クイ、チャン・ヤオシン、ワン・ホンタオ

配給:アニープラネット
公開:2月9日より岩波ホールにて
上映時間:105分
公式HP:www.futon-movie.com

 
■ストーリー
 
北京の旧城内にある古い家屋が並ぶ街・胡同(フートン)。そこに93歳のチン老人はひとりで暮らしている。かつては理髪店を営んでいたチン老人も、今は常連客に頼まれた時だけ出張し、調髪と顔剃りをしているだけだ。しかしチン老人は、朝六時には目覚め、鏡の前での身だしなみも怠らない。お客には寝たきりでテレビばかり見ている老人もいれば、快活な名物モツ屋の主人もいた。そんな胡同にも再開発の波が押し寄せ、役人が家々に取り壊しのマークを記し始めた。そんな中、チン老人は孤独死をとげた老友を発見。やがて来る日に備え、チン老人は黙々とその準備を始めた。
 
■レヴュー
 
時間が止まっているような北京の下町・胡同は、これまでもたびたび中国映画の舞台となってきた。古い街並と顔が見える近所づきあい。今の中国が失いつつあるものが、そこにあるからだ。ただし実際にそこに住む人々を使って撮られた劇映画は今回が初めてではないだろうか。本作の主人公・チン老人を演じるのはチン老人。つまり自分で自分を演じているわけで、チン老人を囲む老人仲間の多くも職業俳優ではなく、実際にそこに住む人々が扮している。

本作は、おそらくチン老人の生活から映画のテーマに沿った部分を抽出して、ドラマとして再構成したのだろう。多分チン老人がいつもしていることを聞き取り、その中からシーンを再現してもらっているのだ。そのためか描写はリアルで演技らしさはない(頼んでもわざとらしくなることは予想がつく)。かつてイランのキアロスタミ作品に、ある事件をその当事者たちに再現ドラマとして演じてもらうという『クローズ・アップ』という作品があったが、本作もそれに近いドラマとドキュメンタリーの間にあるような作品だ。

途中、町へ出たチン老人が自転車を止めて歩道の脇にうずくまるシーンがある。離れたところから長回しで映し出されるその場面で、僕はしばしドラマであることを忘れてハラハラしてしまった(試写室がどよめいたシーンだ)。しばらくして老人は動き出すのだが、撮影中本当に具合が悪かったのか、それとも演技なのか、何ともいえない場面だった。(★★★前原利行)

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