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■オフサイド・ガールズ/Offside
 
2006年/イラン
監督・製作・編集:ジャファル・バナヒ(『白い風船』、『チャドルと生きる』)
出演:シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール

配給:エスパース・サロウ
公開:8月、シャンテ・シネほかにて
上映時間:92分

公式HP:www.espace-sarou.co.jp/offside

 
■ストーリー
2006年、ドイツW杯への出場をかけたバーレーン戦が、テヘランのアザディ・スタジアムで開かれようとしていた。そこへ男装して何とかもぐりこもうとしている少女たちがいた。イランでは法律で女性のサッカー観戦が禁止されているのだ。厳重なチェックの中、スタジアムの外に作られた仮設留置所に、あえなく捕まった少女たちが次々に集められてくる。やがて試合が始まり、中から熱狂の声が聞こえてくると、少女たちは警備の兵士に実況をしてくれとせがむ。少女たちの要求に手を焼く、農村出の隊長。そんな中、トイレに連れ出した少女が逃げ出した…。
■レヴュー
 
イランではサッカーは国民的なスポーツだ。重要な試合でイランが勝つと、町の通りでは車のクラクションが鳴り、踊りだす人々まで現れ、まるでお祭り騒ぎになる。以前、W杯出場をかけた日本との予選の時には、試合終了後に興奮した観客と警備の兵士が揉み合いになり、死者が出る事件も起きたほどだ。

そんなイランだが、女性には男性のスポーツのスタジアム観戦が禁止されている。女性が生の試合を見ていいのは、女子チームの試合のみ。古代ギリシャでも男性のみに許されていた闘技場のスポーツ観戦に、息子の活躍見たさに男装して入場した母親の話が出てくるが、イランの女性には服装の規定をはじめ、古代ギリシア以上に、男性にない様々な制約が課せられている。しかし本作のように、「なぜ女性はスタジアムで観戦してはいけないの?」という問いに、明快に答えられる者はいないだろう。質問を受けた兵士は「汚い言葉で罵り合っているから、それを女性に聞かせたくないのが理由だろう」というが、それなら悪いのは罵っている男のほうだろう。男女同席の観戦が宗教上問題なら、別席を作ればいい。「女性には見られたくない姿をさらしているから」というのが、男性の本音なのだろうが。「サッカー観戦」はそんな男性優位社会の一端に過ぎないのだ。

女性の人権を取り上げた本作だが、ユーモアを散りばめた、エンタテインメントとしても成立する作品だ。あの手この手を考えて、何とかして試合を見ようとする少女たちと、それに翻弄される監視の兵士たち。どちらも等身大の庶民たちで、悪人はいない。笑いながらも考えさせられる上質なドラマだ。また、中学生や高校生もきっと共感できる、「青春映画」の王道でもある。(★★★★前原利行)

 
■映画の背景
 
・反米、反ユダヤの強硬派として保守的なイメージが強いイランのアフマディネジャード大統領だが、こと女性のサッカー観戦に関しては好意的で、女性席を作る案を国会に提出した。しかしその提案は却下されたという。

・バナヒ監督はインタビューで、W杯出場をかけた日本との試合後に死者が出た事件も本作にインスピレーションを与えたことを述べている。これは試合終了後にスタジアムの外で観客と兵士の間で揉み合いが起き、大勢の下敷きになった7人が死亡したという事件だ。その際に、報道された写真は6人分しかいなかったので、7人目の犠牲者は女性だったのではないかという噂が立ったという。

 
■関連情報
 
・デビュー作『白い風船』でカンヌ映画祭新人賞、『チャドルと生きる』でベネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)、そして本作でベルリン映画祭銀熊賞と、ジャファル・バナヒはこれで世界三大映画祭を制覇したことになる。『チャドルと生きる』は、男性優位のイラン社会で様々な境遇の女性たちが行き場を失っていく、メッセージ性の強いシリアスな作品だ(タブーであるイランの売春問題にも触れていた)。当然のように『チャドルと生きる』は、イラン国内で上映されることはなかった。この『オフサイド・ガールズ』もイラン国内では上映許可が出ていない。政府の方針に問題提起をすること自体が問題なのだ。
 
■DVD情報
 
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