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■サラエボ、希望の街角/Naputu

戦火の記憶が残るサラエボに生きるカップル。
いまだ心の傷が癒されない姿を『サラエボの花』の監督が描く

2010年/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ドイツ、オーストリア、クロアチア

監督:ヤスミラ・ジュバニッチ(『サラエボの花』)
出演:ズリンカ・ツヴィテシッチ、レオン・ルチェフ、ミリャナ・カラノヴィッチ

配給:アルバトロス・フィルム、ツイン
公開:2月19日より岩波ホールにて
上映時間:104分
公式HP:www.saraebo-kibou.jp

 
■ストーリー
 
キャビンアテンダントのルナと空港の管制官のアマルは、サラエボのアパートで同棲生活を送っている。ある日、アマルは勤務中の飲酒を知られ、停職処分に。一方、ルナは医師に妊娠が難しいので人工授精を勧められていた。やがてアマルは新しい仕事を見つけた。「かつての戦友に紹介された子ども向けのパソコン教室」とルナに言うが、その戦友がいまはイスラム原理主義者であることに、ルナは不信感を抱く。やがてアマルは仕事に出かけ、音信不通に。ルナはアマルを訪ねて彼が働く湖のほとりのコミューンに向かった。そこではイスラムの信仰に安らぎを見いだしていたアマルがいた。
 
■レヴュー
 
ボスニアの内戦終結から15年。しかし、同じ国民同士が殺しあった深い傷は、いまだ癒えることがない。前作『サラエボの花』で、平和に見える現在のサラエボにいまだ戦争が及ぼす影響を映し出した監督ヤスミラ・ジュバニッチは、今回はより“進行形”の問題を盛り込んでいる。

主人公のカップルはムスリムだが、生活習慣や考え方はヨーロッパ化されている。もともとボスニアに住むムスリムは、それほど宗教に厳格でなかったという。ヨーロッパにおけるキリスト教のようなものだろう。ところが、内戦時に劣勢になったイスラム教徒のボスニア人を助けに、イスラム諸国から多くの義援兵がやってきた。多くは厳格なムスリムだったため、その影響が強く残ったようだ。また、戦後の復興時に、やはりイスラム系の団体の援助が多く、彼らは援助と共に布教活動も活発に行った。そこでボスニアの人々の中には、キリスト教徒の戦いに負けたのは、信心が足りなかったからだと思うようになる人々も現れた。この映画にも描かれているように、時代に逆行するようだが、世間に背を向け、宗教に埋没する人が増えているのだ。

本作には様々なボスニアの社会事情が反映され、興味や知識のない人には状況がわかりづらいかもしれない。しかし、外国の話ではなく、たとえばもしあなたのパートナーが、突然、ある宗教に傾倒したと考えてみることもできる。そうなって2人は今までのような生活を、続けていくことができるのだろうか。原理主義的に宗教に生きることは、現在の社会の規範から離れることで、そうなったら、あなたはそれに従うか、離れるかのどちらかしかなくなるのだ。(★★★☆前原利行)

 
■DVD情報
 
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