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■マイ・ファーザー/MY FATHER - Rua Alguem 5555 -

2003年/イタリア、ブラジル、ハンガリー

監督・脚本:エジディオ・エローニコ
原作・脚本協力:ペーター・シュナイダー

出演:チャールトン・ヘストン(『ベン・ハー』『猿の惑星』)、トーマス・クレッチマン(『戦場のピアニスト』『Uボート最後の決断』)、F・マーレイ・エイブラハム(『アマデウス』『薔薇の名前』)

配給:アルシネテラン
上映時間:112分
公開:銀座シネパトスにて上映中
 
■ストーリー
 
 1985年、ブラジルのマナウスの郊外墓地で白骨死体が見つかる。それはアウシュヴィッツ収容所で、数多くの残酷な人体実験を行なった"死の天使"ヨゼフ・メンゲレのものだった。世界中から報道陣が集まる中に、メンゲレの息子ヘルマンの姿があった。ユダヤ人弁護士ミンスキーは、ヘルマンに真実を話すようにうながす。ホテルの部屋で落ち合った2人。ヘルマンは自分の少年時代、そして8年前に初めてマナウスで会った、父親との日々を語りはじめるのだった…。
 
■レヴュー
 
 もし自分の父親が、決して許されることのない犯罪者だったら…。血がつながっていることで、その子も父の罪を背負って生きて行かなければならないのか。そんな質問を自分に突きつけられたような作品だ。
 メンゲレの墓が発掘され、それを見つめる息子へルマンにユダヤ人女性が叫ぶ。「人殺し! 父親が人殺しなら息子も同罪だ!」。そしてヘルマンの悩みや葛藤を聞いたユダヤ人弁護士も、彼に同情することはない。
 自分の父が殺人者だったことを知り、悩み憎むヘルマンの少年時代。成人してようやく地下組織の力を借りて父に会いにいくヘルマン。息子は父の口から本当の話を聞きたかった。しかし父の口からは後悔や改悛の言葉は出て来ない。この構図はいろんな国や人間に当てはまるだろう。僕は戦争責任をいまだ問われ続けている日本とそこに住む私たちの姿が、ダブってきた。戦争中に日本人がした悪行は確かにひどいが、その後に生まれた人々もそれを背負わなくてはならないのだろうかと思っていたからだ。映画の中でも、もし父メンゲレが罪を認めたり、また戦犯として裁かれていたら、ヘルマンの気持ちも少しは楽になったのではないかと思う瞬間がある。
 監督はインタビューの中で「第二次世界大戦後に生まれた世代は、歴史に対して何の責任も関係もない、という考えを真っ向から否定します」と語っている。それを背負い、正面から向き合って精算していかなければならないと。父の(世代の)犯罪を乗り越えるためには、辛い現実でも受け入れるしかない。同じことを繰り替えさせないためにも。
 正直言って映画としては完成度はいまひとつで、不満もあるのだが、それでもそんなことを考えずにはいられない作品だった。父メンゲレ役には、アルツハイマーをおしてチャールトン・ヘストンが久々の力演を見せている。ヘストンにより、メンゲレという人間に厚みが出たことはまちがいない。(★★☆前原利行)
 
■映画の背景
 
 医師メンゲレは双子に特別な関心を持ち、3000人に及ぶ人体実験をアウシュヴィッツ収容所で行なった。なかには生きたまま解剖された子どももいたという。戦後、メンゲレは戦犯となり、南米を点々と逃亡する。メンゲレの死後、彼の息子が週刊誌のインタビューに答えた記事をもとに書かれたのが、映画の原作となった「父」だ。
 

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