ウォン・カーウァイ×ノラ・ジョーンズの組み合わせは、 2007年/フランス、香港 監督:ウォン・カーウァイ(『花様年華』『恋する惑星』) 配給:アスミック・エース そのカフェには鍵がいくつも入ったガラス瓶があり、その鍵ひとつひとつにこのカフェを訪れた人たちのドラマがあると語られる。いかにもカーウァイらしい小道具だ。もちろんそその中にはオーナーであるロウの鍵もある。そこを出発点に、物語はニューヨークから離れていくロードムービーへと変わるのだが、途中の移動シーンはないので疾走感はなく、遠く離れた距離感だけが強調されるのもカーウァイ作品らしい。 メンフィスのバーで、ノラはアル中の警察官(ディヴッド・ストラザーン)に出会う。彼は別れた妻のことが忘れられず、自暴自棄になっている。警官の元妻(レイチェル・ワイズ)は、自分を町に縛り付ける夫から逃げたがっている。ここではノラは傍観者として二人を見ているが、別れた恋人に固執し続けて自分をダメにしていく警官の姿は、彼女がそうなっていたかもしれない運命を思わせる。このエピソードでの音楽はライ・クーダーで、バーの雰囲気に合わせてオーソドックスなリズム&ブルースが流れる(オーティス・レディングの名曲『トライ・ア・リトル・テンダネス』も)。 次のエピソードは、ラスベガス近郊の小さな町のカジノが舞台だ。人を信用しない女ギャンブラー(ナタリー・ポートマン)に関わったノラは、「信用しないこと」がどういう代償を生むかを知る。 意外なほど「ひねり」がないストレートなラブストーリーかもしれないが、それはジュード・ロウもノラ・ジョーンズも基本的には「善良」で、我慢するタイプのキャラクターだからだろう。『花様年華』のようにカーウァイ作品の主人公たちは、自分からなかなか積極的には行動しようとせず、状況(周囲の人間)に抵抗しない。激しいドラマとそれが生む結果よりも、宙ぶらりんの「状態」を描くのが好きなのだろう。だからどうということはないが、映画を見ている間、その気分に浸れるのは悪くない。僕はその雰囲気が好きだから。(★★★☆前原利行)
■マイ・ブルーベリー・ナイツ/My Blueberry Nights
失恋した女性がニューヨークを離れアメリカ縦断の旅に出る。
意外なほど素直でオシャレなラブストーリーに仕上がった。
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ(『コールド・マウンテン』『ホリディ』)、ディヴッド・ストラザーン(『グッドナイト&グッドラック』)、レイチェル・ワイズ(『ナイロビの蜂』『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』)、ナタリー・ポートマン(『レオン』『スターウォーズ』シリーズ)
公開:3月22日より日比谷スカラ座ほか東宝洋画系
上映時間:95分
公式HP:wwww.blueberry-movie.com
■ストーリー
高架列車がすぐ脇を走るニューヨークの街角にあるカフェ。失恋したエリザベスを慰めてくれたのは、オーナーのジェレミーが焼くブルーベリー・パイだった。好意を感じあう二人だが、別れた恋人を忘れられないエリザベスは旅に出る。エリザベスは最初に訪れたメンフィスで、昼間はダイナー、夜はバーで働くようになる。そこで別れた妻のことが忘れられないアルコール中毒の男に出会う。
■レヴュー
『2046』以来となるウォン・カーウァイ監督の新作は、アメリカを舞台にした全編英語台詞の作品。しかもアジア人は出てこないという点で、興味を引く。恋人に振られた女性が、ふと入ったカフェで知り合ったオーナーの男性。二人は好意をお互いに持つが、まだつきあう時ではない。オーナーのジュード・ロウ(香港版ならまちがいなくトニー・レオン)はその場でノラに惹かれるが、ノラはまだ前の恋人のことが忘れられない。
■映画の背景
・映画で使われたロケ地は、ニューヨーク、メンフィス、エリ、ラスベガス、ヴェニス・ビーチ。
■関連情報
・主演のノラ・ジョーンズは、1979年ニューヨーク生まれ。父親はインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカール(ノラが生まれたときは母親はすでに離婚していた)。2003年に発表したブルーノートからのデビューアルバム「ノラ・ジョーンズ」は全世界で2000万枚を売り上げるという大ベストセラーになった。2004年に出したセカンドアルバム、2007年のサードアルバムはいずれも全米1位になっている。