2004年/アメリカ 監督・製作:ダニエル・アンカー 配給:セテラ・インターナショナル 本作に出てくる音楽はクラシックばかりではない。クラシックの演奏は仕事のひとつで、演奏家にとっては好きな音楽のひとつに過ぎないとでも言わんばかりに、オーケストラ以外での「課外活動」ぶりも印象に残る。あるトロンボーン奏者は、コンサート後にサルサクラブのバンドでの演奏があるし、ブルーグラスのバンドに参加するヴァイオリニストや、アラブ音楽に挑むチェロ奏者もいる。音楽ばかりではなく、マラソンや油絵に挑むメンバーなど本業以外も見ていて実に楽しそうで、決してクラシック一辺倒の「音楽バカ」ばかりではない。個々のメンバーが音楽を始めたきっかけも多様だ。子どもをヴァイオリニストにしようと決めていた親から英才教育を受けていたものもいれば、母親が反対したから反発してプロの音楽家を目指したというヴァイオリニストもいる。 そうした多様さは、オーケストラが多種多様な楽器から成り立っているのに、どこか似ている。そしてそれこそがオーケストラの魅力なのだ。本作に登場する楽団員は、私たちが演奏会会場で受けがちな「完璧な演奏をするが少々人間味に欠ける」といったイメージをくつがえすが、それが本作の狙いなのだろう。当たり前だが、メンバーひとりひとりは人生がある独立した人間だ。私たちはあらためてそのことに気づかされ、それらが合わさってひとつの音楽を紡ぎ出すことに驚きを感じるのだ。 いかに個々がオーケストラという全体に調和していくかが、語られないわけではない。しかしオーケストラの要である指揮者は演奏シーンには登場はするが、彼が語るシーンはない。あえて指揮者を登場させなかったのは、このドキュメンタリーが追うのはオーケストラのパーツとしての楽団員ではなく、ひとりひとりの個性だからだ。そこに音楽の豊かさがあると言わんばかりに。(★★★前原利行)
■オーケストラの向こう側〜フィラデルフィア管弦楽団の秘密/Music From The Inside Out

フィラデルフィア管弦楽団のメンバーへのインタビューを通し
演奏家と音楽との関係に迫るドキュメンタリー
出演:フィラデルフィア管弦楽団のメンバー
公開:5/17(土)〜 6/13(金)渋谷ユーロスペースにて期間限定ロードショー
※平日はレイトショーのみ、土日はモーニング&レイトショー
※6/7(土)〜6/13(金)はモーニングショーのみ
上映時間:90分
■レヴュー
見る前はてっきり「オーケストラがリハーサルを繰り返し、音楽を完成させるまで」的なドキュメンタリーかと思っていたが、実はその正反対。「集団」の中の「個」それぞれに焦点を当てた作品だった。数十人に及ぶオーケストラのメンバーへのインタビューと、彼らのオーケストラ以外での生活ぶりなどが交互に映し出されていく。
■関連情報
・映画の公開と同時期にフィラデルフィア管弦楽団の日本ツアーが行われる。期間は5/23〜27。詳細は以下のページを参照のこと。
http://kajimotoeplus.com
■DVD情報
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