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■ブリューゲルの動く絵/THE MILL & THE CROSS


(c) 2010, Angelus Silesius, TVP S.A

16世紀のネーデルランドが生んだ偉大な画家・ピーテル・ブリューゲルの名作『十字架を担うキリスト』に描かれた人物が動き、物語が語られる。見る者を絵の中に誘う体験型のアートムービー。

2011年/ポーランド、スウェーデン

監督・制作:レフ・マイェフスキ
出演:ルトガー・ハウアー、シャーロット・ランプリング、マイケル・ヨーク

配給:ユーロスペース+ブロードメディア・スタジオ
配給協力:コミュニティシネマ・センター
上映時間:96分
公開: 12月17日(土) 渋谷ユーロスペースにて公開 他全国順次
公式HP:http://www.bruegel-ugokue.com

 
■ストーリー
 
16世紀、フランドル地方の夜が明け、農村の一日が始まる。若夫婦は仔牛を売りに出かけ、岩山の風車守りの家族は風車を回し小麦を挽く。一方、のどかな村の様子とはうらはらに、支配者は異端者を迫害していた。アートコレクターのニクラース・ヨンゲリンク(マイケル・ヨーク)は、画家ピーテル・ブリューゲル(ルトガー・ハウアー)に、このあり様を表現できるかと問いかける。それに応えブリューゲルが風車の回転を止めると、すべての光景もぴたりと動きを止めた。するとフランドルの風景の中にキリストや聖母マリア(シャーロット・ランプリング)らが過去から舞い戻り、聖書の「十字架を担うキリスト」の物語が始まった……。
 
■レヴュー
 
 画家ピーテル・ブリューゲルは、寓話や民衆の生活を好んで描き、また、聖書の物語を題材にした宗教画の中にも、庶民の姿を生き生きと描いた画家として知られている。この映画『ブリューゲルの動く絵』 の題材となっているのは、彼の代表作の一つ《十字架を担うキリスト》。その絵の中に描かれた人物そのままの衣装をまとったキャストが、絵の中の場面にまつわる物語を演じるという趣向だ。作者であるピーテル・ブリューゲル(ルトガー・ハウアー)自身が語り部となっている。恐らく多くの人がそうだと思うのだが、ブリューゲルの絵にはつい見入ってしまう。表情豊かに描かれた様々な人物ひとりひとりを追ってしまうからだ。これはまさに、その欲求に答えてくれる作品だと言える。

 この絵の中央にいるのは十字架を背負い、ゴルゴダの丘へ向かうキリスト。そこを中心として、絵は放射状に描かれていて、それは「クモの巣」にヒントを得た構図だとブリューゲルが自ら解説してくれる。この絵の主題はキリストの受難であって、宗教的な意味を踏まえることは、この作品を理解するのに欠かせない。しかし、その回りにあるのは、のどかな風景の中で営まれる市井の人々の生活であったり、異端者を排除するむごたらしい出来事だったりする。絵の中の物語は、受難も喜びも怒りもの悲しみも、全ては一つの世界の中で動いていることを気づかせてくれる。粉挽きの風車がきしみながら回る音が、それを喚起する装置になっている。

 絵画の中に入り込むという希有な体験を通して、絵が伝えようとしていることを理解し、絵画を楽しむことができるのは面白い。手作り感のあるCGや合成映像も味わいがある。主立った登場人物はブリューゲル、絵画コレクターのヨンゲリングと聖母マリアのみ。台詞はきわめて少ないが、この3人の俳優の存在感は際立っている。(★★★☆ 加賀美まき)

 
■関連情報
 
 この絵画があるのはウィーンの美術史美術館。そこにブリューゲルの絵画を集めた一室がある。そこにたどり着くまでに、他の画家たちの膨大作品を見ながら、いくつもの部屋を通らなくてはならないが、この一室で見る絵には、そこに至までに見た絵とは全く別な印象を受けるだろう。映画の最後にその部屋も映し出される。
■公開連動企画
 
「AからZで紐解くブリューゲルの人生」 12月1日(木)〜1月17日(火)がメゾン・デ・ミュゼ・ド・フランスで開催される
http://www.museesdefrance.org/top.html

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