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■マイティ・ハート 愛と絆A Mighty Heart

2007年/アメリカ

監督:マイケル・ウインターボトム(『イン・ディス・ワールド』『ひかりのまち』『グアンタナモ、僕たちが見た真実』)
原作:マリアンヌ・パール『マイティ・ハート 新聞記者ダニエル・パールの勇気ある生と死』(潮出版)
出演:アンジェリーナ・ジョリー(『17歳のカルテ』『トゥームレイダー』『アレキサンダー』)、ダン・ファターマン(『シューティング・フィッシュ』)、アーチー・パンジャビ(『ベッカムに恋して』『ナイロビの蜂』)、イルファン・カーン(『サラーム・ボンベイ!』)

配給:UIP映画
公開:11月23日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて
上映時間:108分
公式HP:www.mh-movie.jp

パキスタンで誘拐されたアメリカ人ジャーナリスト。彼の妻は希望を持って、夫の帰還を待ち続けた。アンジェリーナ・ジョリー主演の実話の映画化

 
■ストーリー
 
 2002年1月、ジャーナリストのダニエルと妻マリアンヌは、パキスタンのカラチを取材で訪れていた。マリアンヌは妊娠五ヶ月。最後の取材を終えたら、2人は帰国の予定だったが、ダニエルはインタビューに出かけたまま行方不明になってしまう。彼の取材相手は、イスラームの宗教的指導者のひとりだった。捜査関係者がマリアンヌのもとに集まってくる。やがて人質になっているダニエルの写真がメールで送られてくる…。
 
■レヴュー
 
 こタイトル、ポスターのキャッチコピーからして、ウェットな恋愛ものかと勘違いしてしまうが、実はこの作品、2002年にパキスタンで実際に起きた「アメリカ人記者誘拐事件」の顛末を描いた、硬派な作品なのだ。日本では多分この事件の知名度が低いので、こうした宣伝方法なのだろうが、日本人にとっての「イラクで起きた日本人誘拐事件」ほど、アメリカでは有名な事件なのだろう。

 映画はウォールストリート・ジャーナルの記者、ダニエルが誘拐される日の朝から始まる。やっと取材先に接触できたダニエルだが、取材自体が誘拐のためのワナだった。時は9.11後、アメリカ軍のアフガン侵攻により、反米が強まっているころだった。しかしまだジャーナリストたちは、イスラーム原理主義者たちの標的になることは少なかったため、この事件は大きな反響をよんだ。そしてインターネットによる、「首切り」処刑映像の公開…。親イスラーム派だった人たちにも、「所詮、彼らにとってとは自分たち以外は敵なのか」と感じさせるきっかけにもなった。

 ダニエルが行方不明になってから、捜査本部が設置され、パキスタンのテロ対策組織のリーダーやアメリカの外交保安官、FBIの職員たちがやってくる。映画を見る限り、みなプロフェッショナルで、誠意を持って事件に対応している。「パキスタン人だから仕事は適当」という観客の予想を裏切って(笑)、このテロ対策組織のリーダーがよく活躍して(含拷問)、犯人組織を追い詰めていくのだ。このころのパキスタン政府は、アメリカの協力が欲しいが内部のタリバンシンパにも手を焼き、両者の板ばさみ状態。そんな時、国内でアメリカ人が誘拐されたわけだから、面目丸つぶれになった。犯人を必死で探す一方、「誘拐された記者はインドのスパイ」とか「モサドと関係あり」と偽情報をリークする。つまり誘拐されるだけの理由があったと矛先をかわしたいのだ。

 本作の主人公はダニエルの妻マリアンヌだが、この捜査が進む部分は、アメリカ、パキスタン政府の人間が協力して犯人を追う、ドキュメンタリータッチの群像劇として見ても面白い。街頭が少なく暗い街中で、多くの人々がうごめいているカラチの町の様子が実にリアルだ。最近は才能の無駄遣いの感があるアンジェリーナ・ジョリーも、今回は久々の名演だ。(★★★☆前原利行)

 
■映画の背景
 
・映画の撮影はリアルさを追及するために、実際の事件の現場となった場所でのロケも含め、カラチ、イスラマバードなどパキスタン国内で行われた。その他にもインドのムンバイ(インド門)などでロケ撮影が行われている。
 
■関連情報
 
・原作に感銘を受けたブラッド・ピットは、自身の製作会社で映画化権を買い取り、本作の制作をスタートさせる。私生活上のパートナーであるアンジェリーナ・ジョリーが主人公のマリアンヌを演じることが決まる前に、アンジェリーナとマリアンヌは面識があったとこともスムーズに進む後押しになった。監督がマイケル・ウインターボトムに決まったのは、ピットが『グアンタナモ、僕たちが見た真実』を見て気に入ったことから。

・アンジェリーナ・ジョリーは『トゥームレイダー』のカンボジアロケがきっかけとなり、難民問題に関心を深め、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使を務めている。

・本作を気に入った人には、マイケル・ウインターボトムの他の作品も見て欲しい。社会派には、戦下のサラエボでカメラマンがジャーナリストの枠を超えてムスリムの子どもを救おうとする『ウェルカム・トゥ・サラエボ』、パキスタンの難民キャンプで暮らす少年が陸路イギリスを目指して旅する『イン・ディス・ワールド』、テロリストと間違えられてグアンタナモ収容所に送られた青年たちを描いた『グアンタナモ、僕たちが見た真実』がおすすめ。他にもロンドンに暮らす人々の孤独を描いた『ひかりのまち』、遺伝子操作が行われている近未来の上海を舞台にした『CODE46』もいい。

 

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