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■倫敦から来た男/The Man from London

『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の監督、ハンガリーの鬼才タル・ベーラ
その新作は、ジョルジュ・シムノン原作のノワール・サスペンス

監督:タル・ベーラ(『サタンタンゴ』『ヴェルクマイスター・ハーモニー』)
原作:ジョルジュ・シムノン「倫敦(ロンドン)から来た男」(河出書房新社)
出演:ミロスラヴ・クロボット、ティルダ・スウィントン(『フィクサー』『ナルニア国物語 ライオンと魔女』)、ポーク・エリカ(『サタンタンゴ』)

配給:ビターズ・エンド
公開:12月12日よりシアター イメージフォーラムにて
上映時間:138分
公式HP:www.bitters.co.jp/london/

 
■ストーリー
 
桟橋のホームを見下ろす制御室で、毎晩、線路の切り替えをしている鉄道員のマロワン。ある晩、マロワンは、ロンドンから来た船に乗っていた男ブラウンの殺人を目撃してしまう。ブラウンが逃げ去った後、マロワンは殺された男が持っていたトランクを海中から拾い出す。中には大金が入っていた。やがてロンドンから刑事がやって来て、ブラウンに事情を聞くが、ブラウンは逃げてしまう。失踪したブラウンを探すため、刑事はブラウンの妻をロンドンから呼び寄せる。
 
■レヴュー
 
正直言って、途中10分ほど寝てしまったが(笑)、それでも十分に見応えのある作品だと思う。監督のタル・ベーラは、94年に発表した7時間半のモノクロ映画『サタンタンゴ』で世界が注目し、2000年の『ヴェルクマイスター・ハーモニー』も絶賛されたハンガリーの鬼才。しかし僕は彼の作品は今回が初めてなので、比較はできない。

まず冒頭、モノクロの画面、水面からカメラが上昇していくと停泊している船のへさきが映る。そのままカメラは静かに船上へと上昇していく。手前に建物の影が映るので視点は別の建物の中だろう。長い。このまま物語が始まらないと思っていると、船上の男達の会話にいきつく。その後、カメラは左右に動き出す。下船する人々、船上の男達、桟橋に止まっている列車に乗り込む乗客たち、船を降りた男が桟橋の反対側へ行き、船上の男が放り投げるカバンを受け取る。出発する列車、そして殺人。ここまでを主人公の目線と時間で語る、30分近いワンシーン(しかもほぼワンショット)に圧倒された。

その後もカメラは上下左右、または引いたりよったりするが、基本的にワンシーン・ワンショットで進められる。家庭内に問題があり、さらに秘密を抱えることになった男。およそ犯罪とは無縁の地味な男が、ふとしたことから犯罪に関わってしまう。感情表現が苦手で無口な主人公なので、我々は最初、彼が善人なのか悪人なのか、どんな人間なのかよくわからない。やがて、ロンドンから刑事がやってくればおびえ、金を着服した男の妻がやってくれば同情もする、ごく「ふつうの男」であることがわかってくる。

本編にはあえていくつか省略したり、見せない部分があるが、それは私たちにその部分を想像で埋めさせるためだ。何もかもすべて見せてしまっては、「知的」とは言えない。そして映画は、私たちの「想像」が加わって完成するのだ。「こんな感じの映画、若いころ、ビルの一室の自主上映のようなミニシアターで見たなあ」。そんなことを思い出す「空気」を本作に感じる。あの頃は、映画と真剣に格闘していたっけ。(★★★★前原利行)

 
■映画の背景
 
・原作は「メグレ警視」シリーズで知られるジョルジュ・シムノン。

・『フィクサー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したティルダ・スウィントンが主人公の妻役で好演している。

 
■DVD情報
 
倫敦(ロンドン)から来た男 [DVD]
紀伊國屋書店 (2010-07-24)
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