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■マーラー 君に捧げるアダージョ/MAHLER AUF DER COUCH


(C)2010, Pelemele Film, Cult Film, ARD, BR, ORF, Bioskop Film GmbH

天才作曲家マーラーと彼に全てを捧げた妻アルマ。互いに求め合いながらも葛藤するふたりの愛を描く。

2010年/ドイツ・オーストリア

監督:パーシー・アドロン、フェリックス・アドロン
脚本:パーシー・アドロン、フェリックス・アドロン
出演:ヨハネス・ジルバーシュナイダー、バーバーラ・ロマーナー、カール・マルコヴィクス、フリードリヒ・ミュッケ

配給:セテラ・インターナショナル
上映時間:102分
公開:4月30日(土)より、渋谷・ユーロスペース他 全国順次公開
公式HP:www.cetera.co.jp/mahler

 
■ストーリー
 
 1910年、夏。作曲家で指揮者としても活躍するグスタフ・マーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)は、精神科医フロイト(カール・マルコヴィクス)を訪ねる。19歳年下で最愛の妻アルマ(バーバラ・ロマーナー)が、若手建築家グロピウス(フリードリヒ・ミュッケ)と不倫関係にあると知り、フロイトにその苦しみを打ち明けたのだ。初めは、不倫を犯したのは妻で、自分に罪はないと怒るマーラーだったが、フロイトの睡眠療法を受けることになり寝椅子に横たわると、彼はアルマとの出会いを語り始める。

 多くの芸術家が集うサロンで、音楽的才能に恵まれたアルマは、その美貌と奔放な振る舞いからも男性達を魅了していた。マーラーもひと目で恋に落ちる。アルマも音楽家として活躍するマーラーの姿に魅かれ、結婚後は一切作曲をやめて、妻として尽くすようにという厳しい条件を受け入れて結婚する。幸福に見えた結婚生活だったが、様々な出来事がアルマを苦しめ、夫婦の関係に不穏な影を落としていく。体調を崩すアルマ。そして間もなくアルマとグロピウスの不倫が発覚する。

 フロイトの診察も佳境に差し掛かり、マーラーは催眠治療によって、それまで目を背けていた現実と向き合うことになる……。

 
■レヴュー
 
 19歳年下の愛妻アルマの不倫。マーラーという大作曲がその苦悩を抱え、フロイトに助けを求めに行くシーンから物語は始まる。冒頭、「起ったことは事実、どう起ったかは創作」とあるのだが、妻アルマの情事とマーラーが、オランダのライデンでフロイトに会ったというのが残されている史実。そして、フロイトの催眠療法の中で、何がどう起ったかがひも解かれていくことになる。この作品の原題の“MAHLER AUF DER COUCH”は『寝椅子の上のマーラー』。つまり、催眠療法を受けるために寝椅子に横たわるマーラーということ。音楽的な作品というよりも、夫婦の愛憎と葛藤の物語だと言える。

 フロイトは、尋ねてきたマーラーに「あなたの犯した罪は何か」と問う。音楽家として成功し、妻にも愛情を注いできた男はその言葉に憤る。アルマとの出会いから結婚生活へと、マーラーのアルマへの情愛が語られる一方で、次第に、アルマを襲った不幸、そこに単を発したアルマの不安が明らかになっていく。途中、インタビューのような、ふたりを巡る人々の証言もあって、マーラーとアルマという夫婦が互いに愛情を注ぎ、求め合い、どう支え合ってきたのか、二人が不安を募らせる原因は何なのかが、さらけ出される。自由奔放なアルマの姿と抑圧されたアルマの姿が回想されるたび、彼女の心の叫びが聞こえてくるのを感じた。最後にフロイトが、マーラーの心の奥に隠蔽・抑止されていた真実を探り出した時、この物語のテーマが、アルマという女性を通して見る女の生き様なのだと理解できる。

 マーラーをはじめとする音楽家が活躍し、クリムトらの芸術が花開き、歴史上まれみにみる文化の爛熟を遂げた世紀末のウィーン。今日でも、古い市街地に近代建築がとけ込み、ユーゲントシュティルの装飾に彩られた街並が魅力的だ。劇中、当時のサロンの様子なども楽しめる。また、マーラーの交響曲は楽器パート別に分断化され、心理描写に効果的に使われている点がユニークだ。(★★★ 加賀美まき)

 
■DVD情報
 

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