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■忘れえぬ想い/忘不了Lost in Time

2003年/香港

監督:イー・トンシン(『つきせぬ想い』『ワン・ナイト・イン・モンコック』)
出演:セシリア・チャン、(『星願』『ワン・ナイト・イン・モンコック』)、ラウ・チンワン(『つきせぬ想い』)、ルイス・クー、原島大地
配給:ユナイテッド・エンタテイメント
上映時間:108分
公開:2月4日シアターN渋谷にてロードショー
 
■ストーリー
 
 ある雨の夜、一台のミニバスが事故を起こし、運転手の男が死亡する。その婚約者であるシウワイ(セシリア・チャン)は突然の悲しみに途方にくれながらも、死んだ婚約者の連れ子ロロを育てるために、自らもミニバスの運転手として生計をたてる決心をする。
 しかし、運転にも慣れていない上、集客やしきたりが複雑なミニバス業界で彼女がうまくやれるはずもなく、バスの修理代、経費、生活費は増えていくばかり。両親や姉にもその無計画さを非難され、シウワイは心身ともに疲れ果ててしまうが、死んだ彼への想いと忘れ形見ロロのために決して諦めようとしない。そんな彼女にいつも助け舟を出すのは、婚約者の死を看取った同じミニバス運転手の同僚、ファイ(ラウ・チンワン)だった。
 
■レヴュー
 
 女が意地を張るというのは健気でかわいい感じもするが、この映画の主人公は度を超えた「壮絶」な意地の張り方をする。華奢な体をさらに細く、ハスキーな声をますます枯らしながら、彼女は気丈に振る舞い続ける。その様子は逆に愛する人を失った悲しみを浮き彫りにする。セシリア・チャンの体を張った演技が痛々しいほどのリアリティを与え、この映画を秀作ならしめている。
 そして、この映画を盛り上げる重要な装置が香港を循環する「流し」のミニバス。アジアのバスはなぜか暴走バスと相場が決まっているが、香港のミニバスもその例にもれない。クリーム地に赤と緑のラインの入った2種類があり、緑のラインのバスは停車所が決まっているのだが、赤いラインの方は客の要求に応じて停車するもの。香港政府は渋滞を引き起こす赤いラインのバスを廃止したがっているという。映画では集客の様子や交通違反すれすれの実態、バス運転手の縄張り争いなどが克明に描かれている。テクニックが必要なミニバスを、どうみても不釣り合いな主人公が運転するのは、見ていて冷や汗ものだ。車酔いしてしまいそうだった。
 『つきせぬ想い』で、イー・トンシン監督がアクション映画一辺倒の香港映画に新風を巻き起こしたのは12年前。それから現在まで、香港と香港映画は様々な荒波にもまれてきた。数々の困難を乗り越え、満を持して作った本作は、香港の町並みを余すことなく活写しながら、香港人の力強さと懐の深さをみせてくれるラブストーリーになっている。(★★★カネコマサアキ)
 
■関連情報
 
第23回香港電影金像獎・賞主演女優賞(セシリア・チャン)、最優秀オリジナル音楽賞受賞
子役の原島大地は父親が日本人で母親が中国人のハーフで、北京語・広東語・日本語を話す。本作で新人賞にノミネートされたが、以前に他の作品に出演していたことが判明し、ノミネートを取り消されてしまったという。

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