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■ロルナの祈り/Le Silence de Lorna


ベルギーに住むアルバニア移民ロルナがした偽りの結婚
やがて愛が生まれるが、それは決してしてはいけない選択だった

2008年/ベルギー、フランス、イタリア

監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(『ロゼッタ』『ある子供』)
出演:アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ(『ある子供』『イゴールの約束』)、ファブリツィオ・ロンジョーネ、モルガン・マリンヌ(『息子のまなざし』)、オリヴィエ・グルメ(『息子のまなざし』『天使の肌』)

配給:ビターズ・エンド
公開:恵比寿ガーデンシネマ他にて公開中
上映時間:105分
公式HP:lorna.jp

 
■レヴュー
 
毎回、すばらしい作品を送り続けてくれるベルギーのダルデンヌ兄弟。作為的な演出を廃した緊張感に溢れるその映像は、まるでドキュメンタリーを見ているような錯覚さえ覚える。カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した『ある子供』に続く本作だが、その演出法には少し変化が見られている。相変わらず、説明なしのざっくりとした語り口だが、今までの16ミリ手持ちから35ミリの固定ショットの多用へ、そして音楽の使用といったことが、より「普通の」映画に近くなったような印象を受ける。

主人公はベルギーに住むアルバニア系移民の若い女性ロルナ。痩せ過ぎた身体に感情を出さない小さな顔。冷たく神経質な印象を受けるが、それには訳がある。彼女はこの国で国籍を得るために、ブローカーの手引きでベルギー人のクローディと偽造結婚をしていた。麻薬中毒者のクローディはお金のためにロルナと結婚したが、今ではロルナに希望の光を見つけて麻薬を断とうとしていた。しかしロルナには秘密があった。同郷の恋人とベルギーで店を開くという夢のために、国籍を取得したらブローカーの手引きで「未亡人」になり、今度は国籍を欲しがっているロシア人と偽装結婚する計画なのだ。麻薬中毒者が、麻薬のやりすぎで死んでも誰も気にしない。死ぬ運命にある男と、親密にはなれない。罪の意識が彼女をそんな表情にさせていたことが、だんだんとわかってくる。

いつものダルデンヌ映画のように説明的なシーンはないので、断片的な情報から私たちは話を掴み取っていかねばならない。すでに進行している映画の途中から放り込まれるようなものだ。やがてクローディが麻薬から更正しようとロルナに助けを求めるあたりから、映画はスリリングな展開になってくる。自分を愛し、助けを求めてくる男を、殺そうとしている自分。ロルナは罪の意識に悩まされる。死なせなくても国籍をとって離婚さえできればと、ロルナはクローディに暴力をふるわせ、それを原因に離婚しようとする。しかし、クローディは彼女を殴ることができない。だがそうしなければ、彼は「消されて」しまう。彼女は自分で自分を傷つけ、警察に届け出る。ブローカーは余計なことはするなというが、これがクローディを救う唯一の方法なのだ。

私たちはこの時点で、本当に何とか2人に幸せになって欲しいと願うようになる。移民であるロルナはブローカーに使われ、その国の人間であるクローディも麻薬乗用者ということでさげすまれている。社会の底辺にいる弱者である2人は、その辛い状況から抜け出るためにも、また拠り所としてもお互いが必要なのだ。クローディはロルナを想い、麻薬を断ち、退院する。ロルナも離婚を成功させる。しかし物語は私たちが望むようには展開していかない。人生は望むようにはいかないのだが、その残酷な展開に私たちも打ちのめされる。しかし、他のダルデンヌ映画のように、ラストではかすかな希望を見せてくれる。「最低の時期はこれで脱した。あとはあなた次第だよ」と言っているように。終わり方はいろいろ解釈を呼ぶと思うが、それこそ作者の望むところなのだろう。(★★★★前原利行)

 
■映画の背景
 
・90年代、それまでの独裁政権が倒れて一挙に民主化が進んだアルバニアだが、これといった国内産業がないため、多くの出稼ぎ労働者がヨーロッパ全域に出て行った。観光ビザで入国したまま働いて住み着いてしまう「不法移民」(日本では「移民」ということばに敏感で使いたがらず「外国人労働者」というが、欧米では移民を使っている)は、また新しい不法移民をその国に呼び込む。ブローカーはマフィア化し、不法移民が支払いを終えるまでは奴隷のように使うし、また殺人などの犯罪も絶えない。
 
■関連情報
 
・本作は2008年のカンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。ダルデンヌ兄弟は過去にカンヌ映画祭で二度のパルムドール(『ロゼッタ』と『ある子供』)、『イゴールの約束』では国際批評家連盟賞を受賞している。
 
■DVD情報
 
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