1954〜1962年にかけて、フランスからの独立を目指すアルジェリア人とフランスとの間に続いた戦争が、アルジェリア戦争だ。この戦争はこれまであまり映画で描かれることが少なく、思い浮かぶのは名作と名高い『アルジェの戦い』(1965年/イタリア、アルジェリア合作)ぐらいだろう。たぶんアルジェリアでは映画化されているのだろうが、国際的には知られていない。またフランスでは政府が「戦争」として公式に認めたのも1999年のことと、「フランス人自身もあまり振り返りたくない」戦争ということで、映画化されることはほとんどなかった。
当時のフランスにとっては、植民地ではなくフランスの直轄領であるアルジェリアでの戦争は、あくまで国内問題。正規の戦いでない以上、拷問や虐殺、国際的に使用禁止の兵器の使用が行われ、互いに残虐な報復が繰り返されて戦いは泥沼化した。アメリカではベトナム戦争を境に、自国の戦争を批判する映画が次々と作られたが、フランスではなかなかそうもいかなかったようだ。本作は『ピアニスト』などの俳優のブノワ・マジメルがこうした過去を伝えようと企画を立案。『スズメバチ』のフローラン=エミリオ・シリに監督を依頼し、自ら主演したものだ。
フランス版「プラトーン」とも評されるように、本作はこの戦争を大きな目線で追うのではなく、地を這う「小隊」の目線で捕らえている。この小隊には戦争をシニカルに見ている古参の軍曹がいる。彼にとって戦争は「正義」や「悪」はなく、ただの殺し合いだ。そこへインテリでリベラルな考え方を持つ新任の中尉がやってくる。彼は人道的に振舞おうとするが、捕虜をへの銃殺命令、村人への拷問が行われるこの戦いでは、ふつうの世界、いや正規の戦争の常識でさえ通用しない。かといって、アルジェリア側が「人道的」かといえばまったくフランスと同じで、見せしめとして村ごと虐殺もしたりする。同じ穴のムジナなのだ。
強い印象を残すのが、ナパーム弾による死の凄惨さだ。当時、戦争で禁止されていたナパーム弾を爆撃するフランス軍。爆風の後には何一つ生きているものはなく、ただ凄惨な死があるだけだ。何とか最後まで理性を保つことができた『プラトーン』の主人公とは異なり、この物語の中尉は心を蝕まれていく。ヒーローは登場せず、見ていて辛い映画だが、それが戦争なのだろう。(★★★前原利行)