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■君のためなら千回でも/The Kite Runner


亡命生活を送るアフガン人青年が過去を清算するため、故郷へと向かう
70年代のカブール市街、どこかで見たと思ったら新疆のカシュガルだった

2007年/アメリカ

監督:マーク・フォースター(『チョコレート』『ネバーランド』)
原作:カーレド・ホッセイニ
脚本:ディヴィッド・ベニオフ(『25時』『トロイ』)
出演:ハリド・アブダラ(『ユナイテッド93』)、ゼキリア・エブラヒミ、ホマユーン・エルシャディ (『桜桃の味』)、ショーン・トーブ(『クラッシュ』『マリア』)

配給:角川映画、角川エンタテインメント
公開:2月9日より恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座にて
上映時間:129分
公式HP:eiga.com/official/kimisen/

 
■ストーリー
 
2000年のサンフランシスコ。小説家になる夢がかなったアミールのもとに一本の電話が入る。それは故郷のアフガニスタンにいる恩人ラヒム・ハーンからだった。「真実を伝える」という彼の言葉にアミールは、過去を回想する。1970年代のカブールで裕福な家庭に育ったアミール。彼は召使の子どもであるハッサンと、いつも一緒に行動する兄弟のような関係だった。凧揚げの合戦の日に二人は最高の栄誉を得るが、ある出来事がきっかけで、二人の心は離れていってしまう。やがてソ連が侵攻し、アミールは父に連れられてアメリカへ亡命する。時は流れ、アミールはかつての友ハッサンとの友情に報いるために、タリバン政権下のアフガニスタンへと渡る。
 
■レヴュー
 
70年代のアフガニスタンのカブールは、ヒッピーの聖地だったと聞く。沢木耕太郎の「深夜特急」にもカブールの描写が出てくるが、当時はパキスタンやインドと同じような感覚で旅ができたらしい。70年代はイランでもエジプトでも、女性が西欧風のスカート姿で町を歩くほど西洋化していたという。ただ、僕らにしてみれば「いい時代」かもしれないが、原理主義者にとっては「神を恐れぬ時代」だったのだろう。

映画の半分を占めるのは、70年代のカブールの様子だ。裕福な家庭で育った少年アミールは、厳格だが正義感の強い父ババとその友人ラヒム・ハーン、そして召使の息子だが親友でもあるハッサンに囲まれて成長していく。アミールの一家はアフガニスタンで多数派を占めるパシュトーン人だが、ハッサンはハザラ人ということで、周囲から何かといじめに合う。アフガニスタンという国はいくつかの民族からなっており、それぞれの力関係から敵対心や差別があるのだ。この少年時代の描写が見ていて気持ちがいい。しかしその友情は差別的なパシュトーン人の少年たちによるハッサンへの「レイプ」で終わりを告げる。

ハッサンを助けることができず、またその負い目からハッサンを疎ましく思い、遠ざけるようになったアミール。やがてアミールはアメリカに亡命し、ハッサンと仲直りする機会を失う。それがあるきっかけにより、アミールはアフガニスタンへと向かうことになるのだが…。

少年時代は友達になるのも早いが、ちょっとしたことで相手に残酷になったりするものだ。しかし大人になった時、過去の自分の行いを時おり思い出し、後悔の念に浸る。ただ、多くの人は償いの機会を得ることができずに、その一生を全うするが、アミールはそのチャンスを得たのだ。

70年代のカブールのシーンを「行ったことがないのに、どこかで見た風景だなあ」と思って見ていたら、エンドクレジットでその理由がよくわかり、ビックリ。アメリカのシーンを除き、本作の大半は中国の新疆で撮影されていたのだ。いい出来の映画なのだが、惜しいのはアクションシーンや大規模なCGシーンは余計だったということ。そんなサービスなくてもいいのになあ。(★★★☆前原利行)

 
■映画の背景
 
・レビューでも述べたが、カブールの町のシーンはおもにカシュガルの旧市街で撮影された。エイティガール寺院の裏の職人街が、すっかりアフガニスタンになるとは驚きだ。スタッフは世界中でロケ先を探したが、カシュガルの旧市街が70年代のカブールにぴったりの場所だったという。また現在のカブールやパキスタンのペシャワールでのシーンもカシュガルで撮影している。ほかにもカブール市外や墓地のシーンはタシュクルガンで、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯の壮大な風景はカラコルム・ハイウェイで、タリバンによる公開処刑が行われるスタジアムは北京で撮影されている。

・そのスタジアムでの石打ちによる公開処刑のシーンは、以前にディスカバリーチャンネルなどで放映した「隠し撮り映像」そっくりに作られている。

・エンドクレジットには様々な国の人の名前が上るが、キャストとスタッフは総勢28カ国に及んだという。

 
■関連情報
 
・原作は2003年に発表されたカーレド・ホッセイニのデビュー作で、アメリカだけで300万部を超えるベストセラー小説になった。翻訳本は、日本ではハヤカワepi文庫から出ている。1965年にカブールに生まれたホッセイニは、1976年に父親の赴任に伴いフランスへ。その後、本国の政権が変わったため、一家は米国へ亡命した。
 
■DVD情報
 
君のためなら千回でも スペシャル・エディション [DVD]
角川エンタテインメント (2008-08-22)
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