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■愛についてのキンゼイ・レポート/KINSEY

2005年/アメリカ・ドイツ

監督:ビル・コンドン
(「ゴッド・アンド・モンスター」)
出演:リーアム・ニーソン(「シンドラーのリスト」「マイケル・コリンズ」)ローラ・リニー(「ミスティック・リバー」)、ピーター・サースガード (「ニュースの天才」)、ジョン・リスゴー(「ガープの世界」)
配給:松竹
上映時間:118分/R-15指定
公開:8月27(土)よりシネマスクエアとうきゅう、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
 
■ストーリー
 
 インディアナ大学の動物学の助教授のアルフレッド・キンゼイは、3人の助手にインタビューの仕方を指導している。それは後に世界中でセンセーションを巻き起こすことになる「キンゼイ・レポート」、すなわち、セックスについての実態調査をするためのものだった。キンゼイが前代未聞の調査を始めるに至る動機には、彼の人生が深く関わっていた。話は抑圧されていた少年時代に遡る……。
 
■レヴュー
 
 例えば、今は少し落ちついた感のある「韓流」ブーム。15年前、指紋押捺問題や就職差別などの「在日」問題が社会的な関心事だった頃、こんな現象を一体誰が想像しただろうか?このブームは短期間のうちに大多数の日本人の韓国人や在日朝鮮人に対する意識を少なからず変えたのではないだろうか。
 『愛についてのキンゼイ・レポート』はそういった社会意識の「変化」についての映画である。パラダイム・シフトが起きた、と実感させられる映画である。

 自由を標榜するアメリカでさえ、1940年代というのは、今のようにポルノ大国ではなく、セックスが娯楽というより生殖行為のためにあるのだと一般的に信じられていた時代だった。(ブッシュの再選を見るにつけ、実は現在もかなり保守的で、カトリック的価値観が根強い国であることがわかるけれど。)セックスをおおっぴらに語る事はタブー。インターネットはもちろん、アダルトビデオすらなかった時代。今や男性誌の和み系コラムに成り下がっている「性のお悩み相談」みたいなものすら、きっとなかったのだろう。

 1948年に出版された男性版『sexual behavior in the human male』は学術書としては史上初の20万部を売り上げるベストセラーになり、一大センセーションを巻き起こした。この映画の主人公、インディアナ大学助教授のキンゼイ博士が、全米1万8000人に対し性についてのインタビューを行い、その結果を統計的にまとめたのがこの本で、いわゆる「キンゼイ・
レーポート」と言われているその一部はこんな感じ。
Q結婚前にセックスをしたことがありますか?
Yes 98% No 2%
Q:結婚後に、妻以外の女性とセックスをしたことがありますか?
Yes 50% No 50%
Q:マスターベーションをしたことがありますか?
Yes 92% No 8%
Q:同性愛の経験はありますか?
Yes 37% No 63%

 次いで出版された女性版はなぜか「猥褻」ということで糾弾され、社会的吊るし上げに会う。博士の名誉は著しく傷つけられ、研究は頓挫してしまうのだが、結果的に彼の目指した研究は20世紀における性科学の礎になり、人々に性の多様性を知らしめる事になる。それは後にジェンダーや同性愛理解に大きな貢献をすることになる。

 映画の中のエピソードには興味深い話が満載。巨根の人の理想的な体位とか、同性愛の6段階の指標とか、フリーセックス、家族のあり方……などなど。(そういえば、3〜4世紀に書かれたインドの性典「カーマ・スートラ」にもペニスやヴァギナについての大きさや関係性、性と人生の価値についての指南が体系的に書かれてあった。科学的、医学的根拠はないとはいえ、今と考え方にあまり大差がないことに驚く。)
 性の悩みを抱えてる人はもちろん、セクシャル・マイノリティの人、また、日夜答えのでない地道な研究や仕事をしている人たちにも、博士の研究と生き方は大きな希望を与えるに違いない。
 今やポルノグラフィは当たり前に存在し、娯楽の主流になり、細分化すらされている。そして「同性婚」が真剣に議論されている時代。オランダ、ベルギー、スペインでは既に「同性婚」は合法化されている。キンゼイ博士の起爆剤は時代を超えて「変化」を着実に起こしている。(★★★★カネコマサアキ)
(追記)
 だが、一方で、そんな社会意識を共有できない地域も世界に存在する。7月19日、イランでは同性愛行為をしたかどで二人の少年が公開絞首刑になった。
 僕は世界の民俗や宗教や社会の違いを面白いと感じるし、尊重するけれども、こういうニュースを聴くと本当に複雑だ。死刑はいくらなんでも重過ぎる。
 
■関連事項
 
LA映画批評家協会賞主演男優賞(リーアム・ニーソン)
ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀助演女優賞(ローラ・リニー)
イギリス監督組合優秀監督賞(ビル・ゴルドン)
フロリダ映画批評家協会賞助演女優賞(ローラ・リニー)
フェニックス映画批評か協会賞助演女優賞(ローラ・リニー)
 
■DVD情報
 
愛についてのキンゼイ・レポート [DVD]
松竹 (2006-03-30)
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