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■キング 罪の王/The King

2005年/アメリカ

監督:ジェームス・マーシュ
脚本:ミロ・アディカ(『チョコレート』),ジェームス・マーシュ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル(『モーターサイクル・ダイアリーズ』)、ウイリアム・ハート(『ヒストリー・オブ・バイオレンス』)、ペル・ジェームス(『ブロークン・フラワーズ』)

配給:メディア・スーツ
上映時間:105分
公開:11月18日(土)渋谷アミューズCQNほか全国順次公開

(c) 2005 Corpus, LLC All rights reserved.
■ストーリー
 
海軍を退役したエルヴィスは、メキシコ人の亡き母親から聞かされていた父親に会うためにテキサス南部の町"コーブス・クリスティ"にやってくる。父親のデビッド・サンダウは、今では牧師となり、信仰心厚い妻、息子、娘とともに裕福な暮らしをしていた。だが、教会の前で、エルヴィスは追い払われる。エルヴィスは父親にとって汚れた過去を象徴する存在だった。困惑するエルヴィスだったが、純粋な美しい娘を誘惑し、父親に近づこうとするのだった。
 
■レヴュー
 
アメリカ合衆国には「ファンダメンタリスト」といわれる人々がいる。

「キリスト教原理主義者」と日本語では訳され、聖書に描かれ得ていること実際に会った歴史的事実として認識し、ダーウィンの「進化論」を否定する保守派層のことを指す。9.11以降、その勢力は増し、ブッシュ大統領を再選させ、アメリカが右傾化していった原動力になったと言われている。

彼らはリベラル派の掲げる「中絶」「同性婚」「性教育」に反対し「家族の価値」を唱える。また、大きな議論になった「神」という存在を別な形で言い表した「インテリジェント・デザイン」という言葉の流布。僕なんぞは『2001年宇宙の旅』のあの冒頭に出て来た黒いかまぼこ板の形状を思い浮かべてしまうのだが、その言い回しは、キリスト教以外の人を取り込もうとする政治的な戦略が意図されていて、ブッシュ大統領を筆頭に学校教育にも導入しようとする動きがあるとか。

 この映画には、その辺を背景に、ファンファメンタリストの牧師一家が登場する。「中絶反対」「家族の価値」などリベラル派との対立軸も具体的に取り入れながら、彼ら「原理主義者」や保守右派勢力を強烈なアイロニーで批判している。

一人の男の訪問が家族を崩壊させていく過程が、パゾリーニの『テオレマ』を思い出させるが、『テレオマ』は神秘的に描かれているのに対し、この映画はあまりに現実的なので、推理サスペンスとしての感触もある。

父親に冷たく突き放されたエルヴィスに、我々は同情し、感情移入する。しかし、エルヴィスが父親に近づこうとする意図が、父親に対する憧憬なのか、復讐のためなのか掴みきれずまま、あっという間に物語の結末に引っ張られて行く。

ガエル・ガルシア・ベルナルは『アロマ神父の罪』でも天使と悪魔が混在した両面性を見事に出していたが、その怪しさはさらに増している。父親で、牧師役のウイリアム・ハートも適役だった。胡散臭さをこんなにも自然に表現できる人もいない。

9.11以降の世界で起きている対米テロ戦争。イスラムとキリスト教の「原理主義」の対立。この映画は表面的に観ると見落としてしまいそうだが、アメリカという国がいかに過激なキリスト教国であるかも暴露している。エルヴィスが最後に吐くセリフが空虚に響く。(★★★☆ カネコマサアキ)

 
■関連事項
 
第15回フィラデルフィア映画祭 
最優秀アメリカン・インディペンデントフィルム賞
 
■DVD情報
 
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