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■カティンの森/Katyn



第二次世界大戦中に起きた、ソ連によるポーランド将校虐殺事件
長らくタブーだった事件の真相を、巨匠アンジェイ・ワイダが描いた力作

2007年/ポーランド

監督:アンジェイ・ワイダ(『地下水道』『灰とダイヤモンド』)
出演:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジミイェフスキ

配給:アルバトロス・フィルム
公開:12月5日より、岩波ホールにてロードショー他 全国順次公開
上映時間:122分
公式HP:www.katyn-movie.com

 
■ストーリー
 
1939年9月、ポーランドは西からドイツ、東からソ連に侵攻され、両国によって分割されてしまう。ソ連によって占領された東部へ、夫のアンジェイ大尉を探しに妻のアンナと娘のニカがやって来た。アンナは捕虜になっていた夫に再会するも、目の前で将校たちは収容所へと移送されていく。やがてアンジェイの父、ヤンをはじめとするクラクフの大学教授たちもドイツにより逮捕。占領されたポーランドでは、どちら側にも自由はなかった。まもなく独ソ戦が始まり、1943年、ドイツは占領したカティンの森で虐殺されたポーランド将校たちの遺体を発見する。
 
■レビュー
 
第二次世界大戦で悪を行ったのは枢軸国側だけ」というイメージがついてしまったのは、結局勝ったものだけが「正義」を主張できるから。ソ連は戦勝国にならなかったら、「スターリンはヒトラー以上の大量虐殺者」として名を残したかもしれない(実際、スターリンは「成功したヒトラー」ともいえる)。

さて、スターリンが命じて行った戦争犯罪のひとつが、この映画の題材になっている「カティンの森事件」だ。スターリンはポーランドをドイツと分割した後、捕虜としたポーランド人将校たち1万5千人を密かに処刑する。将来、指導者となりそうな彼らは、ポーランド支配に目障りだからだ。しかし、まもなく独ソ戦が始まり、虐殺現場をドイツ軍によって発掘されてしまう。発見されたのは戦争中で、これはドイツによっては「ソ連もひどいことしていますよ」という格好の事件だった。ドイツはこの事件を世界に発表するが、かといってドイツが正しいわけではなく、ポーランドでは別の虐殺を行っていた。戦後、ポーランドを支配したのはソ連だったため、ポーランドではこの事件に触れることは長らくタブー。また、アメリカはじめ連合軍も、この事件に関しては目をつぶった。ソ連が公式にこの事件を認めたのは、1990年のことだ。

本作は虐殺された将校たちだけではなく、帰還を待ち続けた家族、とりわけ妻など女性たちに光を当てている。戦争や非人道的な行いが、いかに人々に深い傷跡を残すか。そして「真実」を覆い隠すことが、さらに傷跡を広げていくことを。犠牲者たちやその家族にとって、真の意味での戦争が終わったのは、自由にものが言えるようになった最近なのだ。悲痛な事件を描いた作品だが、力作であることはまちがいない。(★★★★前原利行)

 
■映画の背景
 
・ドイツはソ連の犯罪を告発する一方、ワルシャワではゲットーの蜂起を鎮圧し、収容所では虐殺を進行していた。どっちもどっちだ。

・ワイダ監督の父も将校で、ソ連の捕虜になり、虐殺された。ワイダがそのことを知ったのは、1957年にフランスを訪れた際に資料を読んでから。しかし当時、そのことはタブーで、映画化にいたるまでは長い年月が必要だった。

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