2010年/中国 監督・脚本:シュエ・シャオルー 配給:クレストインターナショナル ある日、父のシンチョンは自分が癌に冒され余命わずかだと知らされる。残された時間の中で、自分亡き後も、息子ターフーが普通に暮らせる術を身につけさせなくてはならない。世話をしてくれる施設は何とか見つけることができた。しかし、父にはまだ、息子に伝えるべきことが残されていた…。 しかし、何よりも泳ぎが得意なターフーは、足かせをほどくと悠々と海を泳ぎ、結局二人はいつもの通り帰宅する。そこで父は新たな決意をするのである。この物語はそこから始まる。 父は、ターフーがひとり残されても大丈夫なようにと、生活する術をひとつひとつ教えていく。シャツの着方、卵焼きの作り方、バスの乗り方・・・根気強く、繰り返し何度も。変化を嫌い、物事の理解に時間がかかる彼には、それがすぐには身に付かない。父と離れれば、情緒不安定になってしまう。父の焦りは募るばかりだ。 その、男手一つで自閉症の息子を育ててきた真面目で平凡な父を、アクションスターのジェット・リーが実直に演じている。障害を持つ子が、自分の亡き後にどう生きて行くのか、それを案ずる父の荷はとてもなく重い。他人の前では感情を抑え、自然に振る舞う姿が、父の苦悩をより鮮明にする。妻亡き後、何かと世話をしてくれている隣人チャイの想いを受け入れられずにいる朴訥な男の姿、そして、息子に全身全霊の愛情を注ぎ、最後の最後まで懸命に息子を支える父の姿に心を打たれる。 幸い、ターフーの受け入れ先は見つかるが、私たちは現代の中国が抱える大きな問題を目の当たりにする。一人っ子政策下で生まれた障害を抱える子どもの多くが、親の亡き後、ひとり取り残されることになるのである。劇中にも、さまざまな施設が登場するが、巨大な国家の中で、障害者が置かれている状況は想像以上に厳しいものであろう。監督自身、ボランティアを通じ、長年障害者の問題に関わってきたという。ターフーとサーカスの女性との関係、母の死の謎など、枝葉の部分に物足りなさを感じるが、全体の静かな演出は、中国の現状を映し出しながら、作品を誠実なものにしている。 旅立つ父の胸の内、そして残される息子の将来を思うと、さまざまの感情が交錯してくる。 何より、自閉症の息子ターフーを演じたウェン・ジャンが見事である。(★★★ 加賀美まき)
■海洋天堂
自閉症の息子と余命僅かと知らされた父。残された時間を共に歩む父と子の物語。
出演:ジェット・リー、ウェン・ジャン、グイ・ルンメイ、ジュー・ユアンユアン
上映時間:98分
公開: 7月9日、 シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
公式HP:http://kaiyoutendo.com/
■ストーリー
水族館で働くワン・シンチョン(ジェット・リー)は、21歳になる自閉症の息子ターフー(ウェン・ジャン)を男手ひとつで育ててきた。泳ぐことが大好きなターフーは、父と一緒に水族館へ行き、空き時間に水槽で泳ぐのを何よりも楽しみにしている。
■レヴュー
透き通るように青い空の下、父と息子を乗せた小さなボートが海に浮かんでいる。よく見ると互いの足は固くロープで結ばれていて、やがて二人は日が降り注ぐ海へ身を投じる。21歳になる息子のターフーは自閉症。余命僅かと知った父は、我が子を残して逝けないと悲観したのだった。
■DVD情報