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■再生の朝に ―ある裁判官の選択―/JUDGE

車の窃盗で死刑判決を受けた青年がいた
刑法改定の狭間で、裁判官はある行動を取る

2009年/中国

監督:リウ・ジエ
出演:ニー・ダーホン、メイ・ティン、チー・ダオ、ジェン・ジェン

配給:アルシネテラン
公開:3月5日より渋谷シアターイメージフォーラムにて
上映時間:98分
公式HP:www.alcine-terran.com/asa

 
■ストーリー
 
1997年、中国河北省の都市に住むベテラン裁判官ティエンは、娘を盗難車によるひき逃げ事件で亡くして以来、心を閉ざし、感情を交えずに仕事をこなしていた。娘の死は、ティエンの判決に恨みを持つ者の犯行と噂されていた。ティエンの妻もまたショックから立ち直れず、2人には会話もない。そのころ、ティエンは車2台の窃盗で逮捕された青年チウの裁判を担当することになる。厳罰主義で望む中国では、窃盗でもある金額を超えると死刑が適用されていたが、この頃にはそれを緩和する刑法改正が進められていた。しかしこの件は改正直前の裁判で、ティエンら裁判委員会はチウに死刑を言い渡す。一方、腎臓移植を待つ地元の有力者リー社長がいた。リーは、チウの腎臓が自分に適合することを知り、裁判所や公安に根回しを始める。刑務所にいるチウは、腎臓を渡せば家族にお金が入ることを知り、運命を受け入れようとする。そして死刑執行の日がやってくるが…。
 
■レヴュー
 
死刑実施国“日本”に住んでいるとピンとこないかもしれないが、いまや死刑廃止は世界の潮流だという。「死刑制度」の存続については議論があるところだが、実行死刑件数が世界中の7割を占める世界一の死刑大国“中国”に関しては、誰しも「やりすぎ」だと思うだろう。死刑は凶悪犯に適用されると思い込んでいる我われからすると驚きだが、中国ではレイプや窃盗、賄賂などの罪でも死罪が適用される。公務員の汚職で死刑というニュースをたまに聞くが、現在でさえそうなのだから、刑法改正以前にはこの映画のように、日本なら軽罪でも中国では死罪が適用されていたことは言うまでもない。

また、死刑囚からの臓器移植ができることも、問題のひとつだ。死刑囚の臓器が密かに売買されているらしいという疑惑は絶えないし、また臓器目当てで死刑判決が乱発されるということも、国際人権団体がよく指摘することだ。

本作には、善人も悪人もいない。身近にいる、ふつうの市民のドラマだ。娘を亡くした裁判官夫婦、死刑を待つ青年、臓器移植を待つ実業家とそのフィアンセという3つのドラマが平行して描かれる。派手さを排した抑制された演出は、注意していないと登場人物のデリケートな心の動きを見過ごしてしまうかもしれない。妻の唯一の心のよりどころである犬を取り上げようと警察がやってきたとき、それまで感情を押し殺していた裁判官が見せる“動”は、心を打つ。

しかし体制批判にもつながる裁判という問題を、過去の話とはいえ政府がよく撮影の許可を出したと思う。それとも、こうした問題はすでに「過去」なのだろうか。そうではないはずだ。(★★★☆前原利行)

 
■DVD情報
 
再生の朝に-ある裁判官の選択- [DVD]
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