| フィンランドを舞台に、終身刑を受け12年間の服役後、恩赦で出所してきたレイラ、悩める人々からの手紙を待つ盲目の老牧師、その手紙を届けにくる郵便配達人の3人が紡ぐ、手紙を巡る物語である。大柄で無愛想なレイラは、人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。終身刑を受けたということから、重い罪を犯したのだろうと想像できる。盲目の老牧師は、人々から届く悩み事が綴られた手紙をレイラに読んでもらい、返事の代筆を頼む。彼は精一杯彼女を受け入れようとするのだが、レイラの態度はにべもない。手紙を届けにくる郵便配達人は、そんなレイラに不信感を抱き、一方のレイラも彼を疑る。3者の心はすれ違ったまま、牧師の元に手紙が届かないことになってしまう。
心を固く閉ざしているレイラは、自らが犯した重罪の赦しを拒んで生きてきたのだろう。牧師ヤコブは、自分は老いて、もはや必要とされない存在になってしまったのだと絶望し憔悴していく。「孤独」の中に身を置くしかないふたりは、果たして神に赦されるのだろうか・・・。
このようなテーマは、宗教的で重いものだが、この物語は孤独を抱えた人の姿を素朴に描き、その視線は静謐で、穏やかな感情に満ちている。愛や受容、そして「神の赦し」もまた人を通してしか感じ取ることはできないもの。赦される事や生きることの意味を教えてくれる人との繋がりは、「絆」といった強いものでなくても、確かに存在するのだと教えられる。深い絶望の淵に立たされていても、誰かが自分の事を思ってくれていると確信できたなら、人の気持ちは癒され、赦しを得て希望を見いだすことができるのだろう。レイラの心は次第に解きほぐされ、胸に封印した思いを打ち明ける時がくる。その心の機微が、静かに、そして緊張感を持って綴られている。レイラと牧師の心が解き放たれる場面は、魂が澄んでいくようで本当に感動的だ。
静かに人を包む白樺林、川の向こう岸に凛として建つ素朴な教会、雨漏りするほど古く歴史を刻んだ牧師館。人の心とフィンランドの美しい情景、そしてショパンやベートーベンの美しい旋律とが見事に連動していて秀逸。何より、3人の登場人物を演じた役者がそれぞれに素晴らしく、小さな作品だが、心を揺さぶられる秀作である。
本国フィンランドのアカデミー賞作品賞、監督賞など受賞し、第82回アカデミー賞外国語映画賞フィンランド代表となった作品。世界各地の映画祭で17の賞を受賞し、日本では「フィンランド映画祭2010」で上映された。
(★★★★ 加賀美まき)
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