常にテーマを社会問題に当ててきた名匠ケン・ローチ 2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン 監督:ケン・ローチ(『麦の穂をゆらす風』) 配給:シネカノン 生きるために、お金が欲しいためにがんばるアンジーは悪人ではない。労働許可証が無いからと追い返したイランからの政治難民マフムード一家の悲惨な状況を見て、親切心から偽造パスポートを作り、仕事を斡旋する。しかし、次第に彼女は、もっとお金があればいい生活できる、息子と暮らせると、他人の犠牲を省みなくなる。そして彼女は、いつのまにか移民を食い物にする社会そのものになっていくのだ。 この世界。はたして、私たちは本当に「自由な世界」に生きているのだろうか。移民だろうが、一般労働者だろうが、働かされるだけ働かされて、用がなくなったら捨てられる。「自由」なようで「奴隷」と変わらないのではないか。そんな問いかけがなされるが、結論は映画ではなされない。ただアンジーの行動を通して、社会の一面を見せるだけだ。コンパクトな小品ながらも、メッセージは重い。しかし今年見るべき映画のひとつであることにまちがいない。(★★★★前原利行) ・僕のおすすめケン・ローチ作品は『ケス』『SWEET SIXTEEN』 ・最近のイギリスの不法移民を描いた映画には、他にもスティーブン・フリアーズ監督の『堕天使のパスポート』がある。『アメリ』のオドレイ・トトゥがトルコからの不法移民を演じていた。少年たちがするパキスタンからイギリスへ「不法移民」のための旅路を描いたのはマイケル・ウインターボトム監督の『イン・ディス・ワールド』。2人ともいい仕事をするイギリス人監督だ。 ・パンフレットを読んで、なるほどと思ったことがある。海外からの不法労働者・在留者は、イギリスでは「不法移民」という言葉を使うが、日本では「外国人労働者」という言葉を使うという指摘だ。つまり「移民」という言葉で、社会の不安を刺激したくない政府(およびマスコミ)が、その言葉を使わないようにしているというのだ。
■この自由な世界で/It’s A Free World…

(c) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol Films S.A.
新作はイギリスの移民労働の仕組みを通し、「自由」を考える
出演:キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック
公開:8月、渋谷シネ・アミューズほか
上映時間:96分
公式HP:www.kono-jiyu.com
■ストーリー
シングルマザーのアンジーの仕事は外国へ行き、労働者を集めること。今日もポーランドでイギリスに働きに行きたい人々から斡旋料を取り、面接をしている。ある日、突然クビを告げられるアンジーだが、彼女は今までのノウハウと経験を生かして、自分で職業紹介所を立ち上げる決心をする。親友のローズを共同経営に、2人は移民労働者たちを集めて仕事の斡旋を始めた。アンジーの努力もあり、仕事は増えていくが、やがてトラブルが出始める。会社の賃金未払いのため、移民たちにお金を払えなくなったのだ。
■レヴュー
■関連情報
・本作は2007年ベネチア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。
■DVD情報
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