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■この自由な世界で/It’s A Free World…


(c) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol Films S.A.

常にテーマを社会問題に当ててきた名匠ケン・ローチ
新作はイギリスの移民労働の仕組みを通し、「自由」を考える

2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン

監督:ケン・ローチ(『麦の穂をゆらす風』)
出演:キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック

配給:シネカノン
公開:8月、渋谷シネ・アミューズほか
上映時間:96分
公式HP:www.kono-jiyu.com

 
■ストーリー
 
シングルマザーのアンジーの仕事は外国へ行き、労働者を集めること。今日もポーランドでイギリスに働きに行きたい人々から斡旋料を取り、面接をしている。ある日、突然クビを告げられるアンジーだが、彼女は今までのノウハウと経験を生かして、自分で職業紹介所を立ち上げる決心をする。親友のローズを共同経営に、2人は移民労働者たちを集めて仕事の斡旋を始めた。アンジーの努力もあり、仕事は増えていくが、やがてトラブルが出始める。会社の賃金未払いのため、移民たちにお金を払えなくなったのだ。
 
■レヴュー
 
イギリスの名匠ケン・ローチは、90年代以降、ほぼ毎年のように映画を撮り続けていながら、そのすべてがすばらしいクオリティを保っているという稀有な監督だ。彼が描くのはこの世界で弱い立場にいる人たち。本作の主人公アンジーもそうした人間のひとりで、イギリス人だが用がなくなったら会社に捨てられるという点では、移民労働者たちとそう変わらない。ひとり息子を抱え、底辺から脱するために彼女は競争社会の中に入っていくが、それは「搾取される人間は、さらに下のものから搾取する」という、世の中のシステムに乗っていくことになってしまう。悪意がないにも関わらず、必死に生きようとする人間がどんどん追い詰められていく社会だ。

生きるために、お金が欲しいためにがんばるアンジーは悪人ではない。労働許可証が無いからと追い返したイランからの政治難民マフムード一家の悲惨な状況を見て、親切心から偽造パスポートを作り、仕事を斡旋する。しかし、次第に彼女は、もっとお金があればいい生活できる、息子と暮らせると、他人の犠牲を省みなくなる。そして彼女は、いつのまにか移民を食い物にする社会そのものになっていくのだ。

この世界。はたして、私たちは本当に「自由な世界」に生きているのだろうか。移民だろうが、一般労働者だろうが、働かされるだけ働かされて、用がなくなったら捨てられる。「自由」なようで「奴隷」と変わらないのではないか。そんな問いかけがなされるが、結論は映画ではなされない。ただアンジーの行動を通して、社会の一面を見せるだけだ。コンパクトな小品ながらも、メッセージは重い。しかし今年見るべき映画のひとつであることにまちがいない。(★★★★前原利行)

 
■関連情報
 
・本作は2007年ベネチア国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。

・僕のおすすめケン・ローチ作品は『ケス』『SWEET SIXTEEN』

・最近のイギリスの不法移民を描いた映画には、他にもスティーブン・フリアーズ監督の『堕天使のパスポート』がある。『アメリ』のオドレイ・トトゥがトルコからの不法移民を演じていた。少年たちがするパキスタンからイギリスへ「不法移民」のための旅路を描いたのはマイケル・ウインターボトム監督の『イン・ディス・ワールド』。2人ともいい仕事をするイギリス人監督だ。

・パンフレットを読んで、なるほどと思ったことがある。海外からの不法労働者・在留者は、イギリスでは「不法移民」という言葉を使うが、日本では「外国人労働者」という言葉を使うという指摘だ。つまり「移民」という言葉で、社会の不安を刺激したくない政府(およびマスコミ)が、その言葉を使わないようにしているというのだ。

 
■DVD情報
 
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