2010年/アメリカ、イスラエル 監督:シュロミー・エルダール 配給:スターサンズ 助かった子どもの母親に、このドキュメンタリーの作り手である監督が何気なく発したこと。そこから激しい口論になり、監督も観客も落胆する。せっかく命を助けた子どもを、母親が「殉教者にしてもいい」と言う。子どもを将来テロリストにしてもいいのか、それこそ恩を仇で返すのか、こんな母親なら助けなきゃ良かったという気分に誰もがなるのだ。しかし、その後、少しずつこの母親の苦しみがわかってくる。彼女は彼女で、子どもの命を救うとはいえ、イスラエル人の助けを借りたことで、同胞であるパレスチナ人から中傷されていたのだ。きっとイスラエルの病院に子どもを連れて行ったこと自体、苦渋の決断だったのだろう。ネットでの誹謗や中傷。疲れきった母親は、パレスチナに、より忠誠を示さなければならなかったのだ。 そして命を救う人々がいる一方、簡単に人々の命を奪う者もいる。イスラエル軍の無差別な報復攻撃。イスラエルの病院で働く医師の家族も爆撃で命を落とす。人の命を救うのは大変だが、奪うのは一瞬だ。医師たちは敵味方関係なく命を救おうとしているのに。そして再び妊娠する母親ラーイダ。同じ免疫系の病気で以前に2人の子どもを亡くしているのに、また子どもを作ることへの疑問を持つ監督(と私たち)。そうした葛藤を幾度となく繰り返し、乗り越え、理解(信頼というほうが正しいかも)していく。きれいごとではなく、そんな傷つきながらの信頼というものを、このドキュメンタリーは示してくれた。そして我々の“人道的な思い”とやらが、失望でいとも簡単に覆されるという偽善も。(★★★☆前原利行)
■いのちの子ども
ガザからイスラエルへ運ばれた赤ん坊のいのちを救うため奔走する人々。
激しい葛藤が、感動を呼ぶドキュメンタリー
公開:7月16日よりヒューマントラストシネマ有楽町にて
上映時間:90分
公式HP:www.inochinokodomo.com
■ストーリー
■レヴュー
■DVD情報