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■灼熱の魂/Incendies


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謎めいた2通の手紙を遺して他界した母親。その母の壮絶な魂の軌跡を、実子で双子の姉弟がたどる衝撃のヒューマン・ドラマ。

2010年/カナダ、フランス

監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーラン、マキシム・ゴーデットレミー・ジラール

配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:131分
公開: 12月17日、 TOHOシネマズシャンテ他にて全国順次ロードショー
公式HP:http://shakunetsu-movie.com/pc/

 
■ストーリー
 
 双子の姉弟、ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)は、他界した中東系カナダ人の母ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)の遺言と2通の手紙を公証人から受け取る。自分たちに心を開くことなく、どこか普通とは違っていた母ナワル。彼女の二通の手紙は、彼らの父親と存在すら知らされていなかった兄へ宛てられたものだった。遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていく……。
 
■レヴュー
 
 過酷な運命をたどった母の壮絶な生き様が、子どもたちの、己のルーツをたどる旅によって紐解かれていく物語である。冒頭は、紛争地のどこかに集められ、イニシエーションを受ける幼い少年たちのシーン。その瞳は怒りと不安の入り交じった光を浮かべていて、因業に満ちた深い物語の始まりを予感させる。

 そして、物語はカナダに飛ぶ。プールサイドで突然、放心状態に陥り、数日後に息を引き取った中東系カナダ人のナワル。彼女の双子の娘と息子は、自分たちに心を開くことがなかった母親の遺書を渡される。それは、会ったことない父と存在すら知らなかった兄へ手紙を渡してほしい、そうしなければ、自分は墓に入ることはできないというものだった。姉弟は戸惑いなからも、若い頃の母の写真を手に、母の故郷へ向かう。

 物語は、母の中東時代と現代とを行き来しながら進んでいく。紛争地で繰り返される宗教や人種の違いよる差別、迫害。憎しみが更なる憎しみを生み、繰り返される殺戮。女性に降り掛かる不条理とその先にある暴力。その中をかいくぐり、必死に生き延びた母の人生に、双子たちは触れて行く。一歩また一歩と母の本当の姿を近づいていく展開に息をのみ、緊張感が張りつめる。

 原作はワジディ・ムアワッドという劇作家・演出家が書いた戯曲で、本編の中で場所は特定されていないが、レバノン内戦から構想を得ているという。原題の『INCENDIES』はフランス語の“火事”、“感情の爆発、動乱、戦乱”の意味を指す。とてつもなく重い因果を抱えながら生きた女性の魂は、炎のような叫びをあげている。子どもたちに手紙を託し、終わりの見えない負の連鎖を断ち切ろうとしたのは母ナワル自身。その凄みを体現した、ベルギー人女優のルブナ・アザバルが圧巻。『灼熱の魂』という邦題も見事だと思う。

 物語の、想像を絶する結末の衝撃は深く、言葉を失う。現実でも未だ紛争は終わらず、人が愚かな罪を犯し続けているこの世界で、私たちは幸せに生きることなどできるのだろうか。心を深く突かれる、見応えのある作品だ。
(★★★★☆加賀美まき)

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