2008年/韓国 配給:ビターズ・エンド ある日、ふたりが住む静かな田舎町で一人の少女が殺害され、ドジュンが容疑者として拘束される。状況証拠だけで事件の解決を急ぐ警察、やる気のない弁護士。息子の無罪を信じる母に、頼れる人は誰もいなかった。真犯人を追うべく母はたった一人で走り出していく・・ 映画は、「母」がひとり放心した様子で草原に分け入るシーンから始まる。「何か」を抱えているらしいことが想像でき、そこから開放されようとしているのか、逃れられずにいるのか、観客の視線はこの「母」に注がれていく。 この作品は殺人を巡るミステリーであり、息子の無実を信じる母親が真犯人を捜すという筋書きである。しかし、映画の中心はそこにあるわけではない。母親の美しい愛情を描いた物語でもない。人の心に潜む光と闇を浮き彫りにし、謎に包まれた人間の真実=本性をえぐり出すヒューマン・ミステリーと言える。誰にでも母がいて、最初に結ばれる母と子の絆は、何よりも深く決して消える事はない。母にとって子どもは他の何にも代え難い存在であり、母の「無償の愛」は時に盲目的な危険をはらんでいるからである。 そして、この映画が心の琴線に触れてくる理由は、ありふれた田舎の情景にもあると思う。冒頭で登場する草原の空気感、簡素は町屋の佇まい、坂道の細い路地の懐かしさ、壊れかけた石塀や川の土手に生える草木・・。気質は違うのだろうが、人の雰囲気までもが日本のそれと似ていて、これは韓国映画を見ていつも思うことなのだが、感情に深く同化する。それゆえ、親子の情愛と画面に写し込まれた情景とが相乗し、心が大きく揺さぶられるのだと思う。 難役を演じ切った二人の主役が見事。息子を一途に思う「母」にはTVドラマで活躍する大女優キム・ヘジャ。ポン・ジュノ監督は彼女を「母」役として作品を構想。彼女の熱演があってこその作品となった。純粋無垢な息子ドジュンを演じたのは、兵役を終え、実の5年ぶりの映画出演となるウォンビン。演技派俳優への大きな転機になったであろう。脇役でのスタンスが定着しているチングが絶好調の好演。幅広い役をこなせる注目の若手俳優である。 『殺人の追憶』のストレートなサスペンス劇に比べ、意味深長で謎めく部分は多いのだが、ポン・ジュノ監督の力量を見せつけられる、見応えのある作品である。 2010年の米国アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表に選出。 ★★★★(加賀美まき)
■母なる証明

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殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追う母親の姿を究極までに描く、
ヒューマン・ミステリー
監督:ポン・ジュノ
脚本:パク・ウンギョ、ポン・ジュノ
出演:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユ・ジェムン、チョン・ミソン
上映時間:129分
公開:10月31日(土)、シネマライズ、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか全国ロードショー
■ストーリー
漢方薬店で働き、貧しいながらもひとり息子のドジュンを育ててきた母。子どもの心のままに成長し、子鹿のような目をしたドジュンは、些細なトラブルを起こしては母をやきもきさせている。だが、息子ドジュンは彼女にとってこの世のすべてだ。
■レヴュー
■DVD情報
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