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■ハーフェズ ペルシャの詩/Hafez

イランの古典詩人に着想を得た、鬼才アボルファズル・ジャリリの最新作。
麻生久美子をめぐる、ふたりのハーフェズのイメージ豊かな作品。

2007年/イラン、日本

監督・脚本・編集・撮影・セット・デザイナー・衣装:アボルファズル・ジャリリ(『少年と砂漠のカフェ』『かさぶた』)
出演:メヒディ・モラディ(『Abjad』)、麻生久美子(『CASSHERN』『時効警察』)、メヒディ・ネガーバン

配給:ビターズ・エンド
公開:1月19日より東京都写真美術館ホールにて
上映時間:98分

公式HP:www.bitters.co.jp/hafez

 
■ストーリー
 
青年シャムセディンは、コーランを諳んじている者だけに与えられる称号「ハーフェズ」を受けたことから、”ハーフェズ”と呼ばれるようになる。一方、高名な宗教家モフティ師の娘ナバートがチベットから帰ってきた。ハーフェズは彼女にコーランを教えることになるが、コーランや詩を詠み交わすうちに、2人は恋に落ちてしまう。しかしそのことでハーフェズは称号を剥奪され、住む家も失う。一方、ナバートは父の決めた男と結婚させられるが…。
 
■レヴュー
 
観る前に、タイトルからしてイランの有名な古典詩人ハーフェズの物語かと思っていたら、まったくの別人だった。またポスターからして麻生久美子が主演なのかと思っていたが、これも違っていた。

タイトルとなっている「ハーフェズ」だが、本作では古典詩人ではなくコーランを暗唱できる者の尊称を指している。しかし主人公の名であるシャムセディンは古典詩人ハーフェズの本名であり、彼がハーフェズの詩を幾度となく詠むことからも、古典詩人の現代的な解釈なのだろう。このハーフェズの尊称を剥奪された若者(イラン映画には珍しくイケメン)は、やがて「愛を忘れる」という誓願を叶えるために村々を回るようになるが、人々は権威によってではなく自然発生的に彼をハーフェズと呼ぶようになる。

この映画にはもうひとりのシャムセディン=ハーフェズが出てくる。最初、同じ名前の彼はモフティ師が選んだ娘ナバートの夫候補として登場するが、彼もまたナバートへの愛から誓願の旅に出る(こちらはルックス的にも対照的にイケていない)。しかし彼も最初のシャムセディンの足跡をたどるうち、次第にハーフェズと呼ばれるようになる。観ているこちらも、次第にふたりのシャムセディンの区別もだんだん曖昧に思えてきて、この二人は表裏一体に思えてくる。道は違うが、行き着くところは同じというように。

愛に生きる若者たちとは対照的に、形式的、権威主義的な宗教指導者や因習に縛られた村人たちが出てくるが、このような宗教批判のため、イランでの公開は今回も無理だろう。決してわかりやすい作品ではないが、この独特のタッチは嫌いではない(★★★前原利行)


■映画の背景

・イランの古典詩人ハーフェズの本名は、シャムスッディーン・ムハンマド。シーラーズで生まれ育ち、本作の主人公のようにコーランの暗唱ができたため、雅号を「ハーフェズ」にした。彼の詩のテーマの多くは「愛」だが、解釈によっては人への愛とも神への愛ともとれるようになっている。

■関連情報
・『かさぶた』『ぼくは歩いてゆく』『七本のキャンドル』などで、現代イランの過酷な状況に生きる子どもたちを描いたアボルファズル・ジャリリ監督作品の多くは海外の映画祭で賞を受賞しているが、本国では上映もままならないのが現状だ。日本では作品の多くが公開されているが、2003年の『Abjad』、2005年の『Full or Empty』は映画祭のみの上映で、今回の一般上映は2001年製作の『少年と砂漠のカフェ』以来となる。

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