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■永遠のハバナ/Suite Habana


Suite Habana
2003年/キューバ=スペイン

監督;フェルナンド・ペレス(『ハロー・ヘミングウェイ』)
配給:Action Inc.
上映時間:84分
公開:ユーロスペースにて 新春2月レイトロードショー
 
■レヴュー
 
 旅先の安宿のベッドの上で目を覚ますと、毎度のことながら、一瞬、ここはどこだろう?と思う。まどろみの中、東京郊外の自室では聞こえるはずのない音が聞こえてくる。うるさいくらいの鳥のさえずりや、ホテル従業員の楽しそうだけど意味不明なおしゃべり、安っぽいエンジン音、サンダルが地面に擦れる音、物売りの素っ頓狂な声……。そして、ああ自分はウブドにやってきたんだ、とか、ここはカトマンズだったんだ、という考えに至る。 
 確かにその街にはその街独自の「音楽」があるな、と思う。
                       *
 フェルナンド・ペレス監督は人々の生活する音をサンプリングする。皿を洗う音、車の排気音、工事現場のハンマーの金属音、ピーナッツを鋳る音、挨拶のキスの音。その音は少しずつ組み合わさって、ハバナの街全体の音楽を作る。映画の原題はSuite Habana。つまり『ハバナ組曲』である。
 ここには日本でおなじみのミュージシャンや、ギャングスターは出てこない。少しくたびれた家に住む、決して裕福とはいえない市井の人々が主人公だ。およそ10人ほどのメインキャストの生活の様子をコラージュしているのだが、セリフらしきものもほとんど出てこない。ドキュメンタリーだというのに、インタビューもないし、ナレーションもない。家族や親しい人物がそばにいるという存在感。それだけで満たされる「幸せ」を映し出す。

 夜になるとモロ要塞の灯台がハバナの人々を照らす。労働者たちはバレエダンサーになったり、ダンスホールの伊達男になったり、時にはドラッグクイーンになったりする。不安で眠れない人もいれば、ジョン・レノンのブロンズ像が盗まれないように交代で見張りをする「眠らない」人もいる。レーニンでもゲバラでもカストロでもないそのブロンズ像は2000年に建てられたもので、その下には代表曲のワンフレーズが刻まれている。「僕のことを夢みがちな人間だと思うかもしれない。でもそれは僕だけじゃないはず」それがハバナの人たちの精神的支えだ。 
 そしてラスト・シーン。メインキャストたちの職業と将来の夢がテロップで紹介される。「そうだったんだ...」自分の魂が大きく揺さぶられるのがわかる。それは意外性があった、というよりは共感に近いものだ。きっとこの映画を観た人は、彼らのなかに「自分自身」を見つけ出すにちがいない。
                         * 

 映画の中で、思わぬ人に出会った。シルヴィオ・ロドリゲス。ルンバやチャチャのような伝統的なキューバ音楽ではなく、ビートルズやボブ・ディランを吸収したキューバ産ポップミュージック。60年代に起きた、ヌエバ・トローバ(新しい歌)というムーブメントの中心人物で、ラテンアメリカのミュージックシーンに大きな影響を与えた人物だ。その清涼感あふれる歌声とメロディは一度聴いたら忘れることができない。彼の歌声と映像が、一般家庭のテレビからさりげなく流れて来たシーンは個人的にとてもシビレた。彼の歌声もまた、ハバナの街の音楽の一部となって溶け合っていた。                                   (★★★★カネコマサアキ)

■関連情報
2003年サン・セバスチャン映画祭 公式オープニング上映作品/SIGNIS賞
2003年新ラテンアメリカ映画祭最優秀作品大賞/最優秀監督賞/最優秀楽曲賞/最優秀音楽賞
2004年カルタヘナ国際映画祭 最優秀監督賞

■DVD情報

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