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■華麗なるアリバイ/Le Grand Alibi

(c) 2008-SBS FILMS-MEDUSA FILM

ある邸宅に集まった男女9人。1人の男が殺され、8人全員に“愛”という名の動機があった―。アガサ・クリスティーが描く危険で華麗な恋愛模様。

2008年/フランス

監督:パスカル・ボニゼール
脚本:パスカル・ボニゼール、ジェローム・ボジュール
原作:アガサ・クリスティー「ホロー荘の殺人」ハヤカワ文庫
出演:ミュウ=ミュウ、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、アンヌ・コンシニ、
   ランベール・ウィルソン

配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:93分
公開:7月17日(土)より Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー
公式HP:www.aribai-movie.com

 
■ストーリー
 
 フランスの小さな村にある上院議員パジェス夫妻の大邸宅。とある週末、招待客は妙な緊張に包まれていた。客のひとり、精神分析医のピエール。彼は妻のクレールと結婚後も、何人もの女性と関係を持っていた。その夜は、現在の愛人である彫刻家のエステルばかりか、過去の愛人で女優のレアも招待され、さらにエステルを愛する作家のフィリップ、フィリップに想いを寄せるパジェス夫妻の姪クロエも同席する。翌日、一発の銃声と女の悲鳴がプールサイドに響く。そこにはピエールが血を流して倒れていて、その傍らには、エステルとクレールがうずくまっていた…。
 
■レヴュー
 
 「ミステリーの女王」アガサ・クリスティーの「ホロー荘の殺人」が原作。名探偵エルキュール・ポワロが登場する名作だが、映画の中にポワロは登場しない。クリスティー自身が脚色した戯曲でも、名探偵を登場させず、男女の恋愛の絡みや人間模様を浮き立たせたものになっている。名探偵の謎解き以上のおもしろさがこの作品の見所なのである。

 ことの発端は、猟銃と拳銃コレクターの上院議員が田舎に構える大邸宅での出来事。週末には時折、上流階級の人々を集めたパーティーが開かれるのだが、ある週末に事件が起こる。一人の男が殺され、その回りには、彼の妻、過去の火遊びの相手、現愛人、元恋人。それらの女性を想う男たち。誰もが殺人の動機を持つように見え、しかし、それぞれにアリバイがある。愛情と嫉妬が渦巻く展開となっていく。

 もちろんミステリーの焦点は「誰が犯人なのか」という謎ときなのだが、中盤は女王クリスティーが描く男女の愛の駆け引きが絶妙。登場人物がそれぞれどういう思いを抱いているのか、それは本心なのか、あるいは意図された行動なのか・・人間同士の複雑な心理模様が、見る者を作品に引きずり込んでいく。筋書きだけ追えば、愛憎劇の末の殺人事件になってしまいそうなのだが、奔放な恋愛模様がおもしろいと思えるのは、舞台を英国からフランスに移した本作ならでは。脚本家としても知られるパスカル・ボニゼール監督は、軽妙な台詞を織り交ぜながら、新旧入り交じった多彩な役者たちの芝居を見事に引き出して、フランス映画ならではの洒落た趣を醸し出している。

 主要な登場人物が多く、最初は彼らの関係がわかりづらくはあるのだが、名探偵の推理力を借りずとも、犯人探しが楽しめる。後半は、事件解決へ向かうおもしろさが凝縮された第一級のミステリー。見ている者をアッと思わせ、納得させ、きっちり締めくってくれる小気味いい90分である。

 2010年はアガサ・クリスティー生誕120年。映画を通してクリスティー作品のおもしろさを再発見することができる。(★★★★ 加賀美まき)

 
■DVD情報
 
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